さよならブルックスブラザーズ。ブランドより機能性が王様の時代。

私自身は、あまり買わなかったブランドなのですが、何せイタリアンブランドやルイヴィトン、エルメスなど欧州ブランド人気の前から日本に定着した海外ブランドですから、しみじみ来るものがありますよね。
1818年ニューヨーク創業と歴史があります。日本進出が1979年というのも随分早いです。
東京在住の方ならば、246青山通りに石貼りで威風堂々の、まだ日本では珍しかった路面店スタイルのショップが印象あるのではないでしょうか。

(写真:wikipedia)

この記事だけでは、日本のお店がどうなるか分かりません。確か日本はダイドーリミテッドさんと合弁だったはずなので営業は継続されるのではないでしょうか。ちょっとホームページをのぞいてみましたが、異変なしに見えます。
どちらにしても、どこかが買い取ってブランドは残るのでしょう。きっと。
直近のオーナーは確かイタリアの眼鏡王だったはずですから、そちらもヤバいんでしょうか?ちょっと分かりません。

ブルックスブラザーズと言えば、ボタンダウンシャツですよね。アメリカ製品らしい厚手の綿オックスフォード素地に襟にボタンがついたスタイルは、今やスタンダードながらちょっと一ひねりが効いていてカッコ良いことこの上ありません。

(写真:ブルックスブラザーズ プレスリリース)
ジャンニ・アニェッリなどイタリアを代表するシャレものが、ボタンを外して着るワザも印象的でアメリカ製品の枠を超えて支持されていました。

(写真:wikipedia)

もちろんコロナの影響がダメ押しになってしまったのでしょうが、それにしてもブランドアパレルの厳しさよ!ですね。
私自身、服好きで若い頃から背伸びをしまくってトップブランドのモノも含めて着倒してきたからこそ感じるのですが、近年のアパレル産業の特に「機能面」での進化はすさまじいですよね。
まさにユニクロに代表されますが、とにかく着ていて快適、楽、洗濯ができる、リーズナブルときて最近ではデザインも良いとなってしまっています。こうなっては、そんな着道楽の私でさえ結構なユニクロファンです。
【SankeiBiz掲載】ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた
ユニクロの柳井さんってなかなか分かりにくい人ですよね。 もちろん誰もが認める日本を代表する起業家、経営者ですし、個人としてしても日本1,2の資産家。 押しも押されもせぬ名経営者であることは早くから誰もが認めるところだったわけです。 私...

元々、ブルックスブラザーズのポジショニングは高級であると同時に機能的というブランドだったはずです。
まさにボタンダウンシャツにして、シャツ襟の跳ねないよう留めておくためにボタンをつけるという、機能性追求が出発点だったわけです。
でも、今やそもそも素地からして、圧倒的なストレッチ性、通気性、吸水性、発汗性をもつ素材の製品が手軽に入手でき、”襟跳ね”どころか、ボタンなどなくとも形状復元力が無茶苦茶に高い製品がザラです。
しかも、もちろんスーツスタイル自体が職場で絶滅する方向で急速に職場着のカジュアル化が進んでいますから、スーツメインのブルックスブラザーズは特に厳しかったはずです。
もちろん、素地や縫製が吟味されたさすがの高級品としてのブルックスブラザーズは大変名残惜しく感じる部分はありますが、実際にはよっぽどのファンでない限り、ちょっとコスチュームプレイ的な大時代感のあるブランドとなっていたかもしれません。

最近、高級とかラグジュアリーってなんだろうか?とあらためて良く考えます。私は、基本的にラグジュアリーに価値を認める人間です。
即物的に言えばラグジュアリーとは詰まるところ「素材」と「デザイン」「仕上げ(縫製)」ですよね。
そこに空間性のあるものであれば「広さ」が加わります。例えば、自動車やホテル、飛行機のクラス別の座席空間などをイメージしてください。この「広さ」とて「広い」方が基本高級ですが、日本人にとっては絶対的な優先順位ではないように思います。
【第5回 世界のトップエンドアパートメント】ニューヨーク 432 PARK AVENUE <間取り・インテリア / 小さめの間取り・SOHO篇>
ということで前回432 PARK AVENUEの750㎡のお部屋を紹介したわけですが、 言うてもその広さはちょっと無理なわけで、もうちょっと狭めのお部屋がより身近に参考になりますよね。 これほどの高級物件でもあるんです。そういうお部...

となると残るは「素材」と「デザイン」「仕上げ(縫製)」です。この「素材」がやはりストレッチ性のある化学繊維が革命的だったとは思いますが、普及価格で提供され始めてしまったと。しかもそれが最初はプラダなど高級ブランドを通してしか買えなかったけれど、今やその10分の1以下の価格帯で豊富に製品化され始めたと。
しかもそれら化学繊維は工業的縫製とも相性が良くて、仕上がりもキッチリ仕上がりやすいと。
さらには、世界市場を最初から想定して大量生産すれば、どんな一流デザイナーを起用しても1着あたりのデザイン費は限りなく安くなると。

こんな時代が来る前は、そもそも良い素材は希少であって(典型的にはカシミアやシルク)、良い縫製も人手がゆえに高級品は小ロットが当たり前。がゆえに一着当たりのデザイン費も安くはなかったわけです。
でも、それなりの着心地と仕上がり、風合、デザインを求めれば高級品しか選択肢がなかったわけです。

でも今は違います。
特に洋服で「着心地」要素は非常に大きい。やはり「着心地」が良くてこそラグジュアリーだと思う。
となると、かねて高級ブランドエンゲル指数バリ高だった私とて、ラグジュアリーを求めるがゆえにユニクロとなってしまったのです。(もちろんまだまだ細部を言えば、アウターはユニクロだけでは事足りないなど、あるのですが)

さよなら、ブルックスブラザーズ。
色々なインスピレーションを与えてくれたブランドではありますが、もし破綻を乗り越えて生き延びるとしても無理をしない方が良いかもしれません。アパレルの世界はまさにパラダイムシフトが起きてしまったのです。すでに歴史的役割を終えたように思えてなりません。

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