【第13回 家族に障害児がいます from N.Y.】世間からの白い目

これは知的な障害を持つ人が家庭の中にいる人はほぼ皆、一度と言わず何度でも経験したことがある事と思う。「世間の白い目」もしくは「好奇の目」。しかも我が家は現在進行形で世間からの白い目を浴び続けているわけだけど、本当にこれにはどう対処していいのか正解が分からない。正解なんてないだろうけど。自分が今まで生きてきた中で感じたことのない他人の視線を我が子が発する突飛な奇声や、変わった行動の度に他者からの視線を浴びる日々。私が考える対策としては、視線に慣れることと受け流す力の強化。今、私の鈍感力が試されようとしている、、、のだろうか。
息子は今月に10歳になった。生まれてから10歳の今に至るまで、彼は言葉というものをちゃんと発したことは無い。2歳の頃、我が家に来ていたスピーチセラピストが一生懸命に発声をさせようと促していたが、全く彼から音というものが発せられることがなかった。そんな状態が続き、プリスクールに通うになっても彼はずっと癇癪を起している時以外は静かであった。(静かではあるが大人しいという意味ではありません。基本的に常に動き回り、癇癪を起して床を転がりまくっているので本来意味する静かというイメージとは違うでしょう。)そんな彼が4歳位の頃に突然、甲高い奇声を発するようになり、その頻度が増していった。所構わず発せられる奇声に、それを聞いた人達はギョッとして音の発生源を確かめるためにこちらを見る。やはり人間も動物なので、聞きなれない奇妙な音が聞こえたら恐怖を感じるから、その音の発生源を確かめるのは理解出来るのだが、その視線が何とも言えない冷たさを感じることが殆どだ。一番注目されている本人は全く何も気付いていないので、その視線を受け止めるのは全て彼と一緒にいる人になる。お陰でこの頃から、益々人のいる所に行きたくなくなった。しかし彼はそんなことには気付いていないので、お構いなしに学校から帰宅後毎日公園に行きたがる。結構地獄だった。

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子供の視線は大人のそれより冷たい

子供は無邪気で可愛いという、幻想なのか願望なのか、そういう考えが一部の人にはあると思うが、私にとって子供は無邪気という名の残酷性を持っていて、知性や道徳性というものが人間に備わっていなかった場合の人間の本質を見せられる思いがする。

adamteplによるPixabayからの画像

子供は自分たちと違うと感じる者に対して殆ど寛容性が無い。異端者は本能的に排除するように出来ている気がする。3歳児くらいまでは他者との違いなどに全く気付いてなくて、どんな人に対しても同じように反応しているように感じるが、4歳以上になってくると段々と社会性が身についてくるからか、何か違うと感じる者に対する反応が顕著に出てくる気がする。なので公園は非常に試練の場になるのだ。特に女の子は男の子よりも社会性が芽生えるのが早いからか、男の子よりも敏感に違いを感じて恐怖と嫌悪の入り混じった目でジィ~っと見てきたりするから辛い。その子が悪くないだけに、どうやって対処していいのか正直分からなくなるのだ。数年前に息子と一緒に地下鉄に乗った時、向いの席に娘二人を連れた親子連れが座った。その時、一人の女の子が息子の奇声と変わった行動にギョッとして、こちらを指さしながら父親の方を向いた。その子のお父さんは「人に対して指をさしたりしてはいけない」と娘を諫めていた。その後、その子はこちらを指刺してくることはなかったが、視線で私達を刺してきた。心の中で「滅茶苦茶気になるんだよね。分かるわ、、、、。」と、子供の行動を止める術は無いということをしみじみと実感したのだった。

世の中冷たい人ばかりではない

自然と他者との関わりが減っていく我が家ではあるけれど、全く誰とも会わずに生活することは無理である。一目見ただけでは障害があるとは分かり辛い我が子。人に声を掛けられても、大胆に無視をする形になってしまう。もちろん目など合わない。それでもまだ4歳位までは、この子はシャイなのねぇって理解されていたけれど、大きくなってくると異様さが際立ってしまう。なので私は「ごめんなさい。この子は自閉症で、あなたのことをわざと無視しているわけではないの。」と答えることにしている。そうすると大概の人が「あぁ、なるほど」といった感じで納得し、理解してくれるので私はサッサと告白することにしている。そうすると中には、自分の家族や親戚に同じ障害の人がいるとか、そういう子供達の学校で働いているとか。結構な割合で身近に自閉症などの障害を抱えている家族や知り合いがいる人がいることに気付く。そういう人達が掛けてくれる優しい言葉が私に元気を与えてくれる。ただ一言、「大変よね、分かるわよ」の言葉にどれだけ励まされたか。自分たちの存在をそのまま受け入れてもらえるということがどれだけ力になるのか。そういったことを身を持って知ることが出来たことは、案外自分の人生にとって大きな財産なのかもしれないとも思う。

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