【第45回 家族に障害児がいます from N.Y.】子供を支える家族にも支援は必要

初めての育児で右も左も分からない育児初心者だった頃、何もかもが手探り状態で不安しかなかった。元々子供にあまり感心がなく、自分の生活圏内に乳幼児がいなかった私は、子育てということに対して全くの無知だったと思う。息子がまだ新生児状態だった頃に発熱したことがあった。慌てて医者に駆け込んだのだが、着替えもオムツの替えも何も持たずに駆け込んだので、診察を終えて新しいオムツを付けて下さいって言われた時に「ハッ」としたことがあったのを思い出した。そのくらい本当に育児に対して無知で、赤ちゃんというものの状態を殆ど理解していなかった私に神様が与えて下さった試練は、私にとって地獄のようなものだった。

ようやく少しずつ赤ちゃんのいる生活に慣れていき、子供の成長と共に育児のスキルを少しずつアップデートさせながら対応。なんかいい感じになってきたなって思えていたのは1年ちょっとの間だけで、自分の子供の様子に徐々に違和感を感じ始めた頃から育児が辛いだけのもに変わっていったのを思い出す。そうして息子に「自閉症」という診断が2歳半で下されるまでの間、何をどうしてどうなっているのかさっぱり分からず不安だらけの毎日だった。2歳前から発達に遅れがあるという診断は受けていたけれど、だからってどう対応して良いのか全く分からなかった。のけぞりながら激しい癇癪を起こし、時も場所も関係なくあちらこちらの床や道路の上で転がりまわる息子を追いかけまわし、抱き起こし、ベビーカーに乗せて目的地もなくうろうろと動き回りながら時間を潰す毎日。それでもNY市が2歳児を対象に発達の遅れがあると診断された子供に対して、セラピストを自宅に派遣してくれるサービスがあったお蔭で色んなことをセラピストさんたちから学ぶことが出来た。そのことがその後の生活にも大きな助けになったと思う。正直、うちの息子に対しては早期の支援はあまり効果があったとは言い切れなかったけれど、セラピストさん達がどのように息子に接しているか、どういう指導をするのか、どういった遊びや玩具が子供の運動機能の支援になるのか、などのことを親の私が学べたことは大きな意味があったと思う。そして最も感謝していることは、プリスクールの見学に一緒に同行してくれた韓国系のセラピストさんの存在だった。彼女が我が家を担当してくれたのは、ほんのひと月ちょっとの期間だったと思うけど、その間にあった4件ほどの息子のプリスクールの見学全てに帯同してくれた。障害児に関する教育のシステムも言葉の意味も何一つ理解しきれていない私に代わって、学校職員に質問してくれたり、見学後に私からの質問に答えてくれたり、感想を言ってくれたりして大変助かった。本当に感謝してもしきれないほど、当時の私にとって彼女の存在はまるで「天使」のようだったのだ。全ての事に対して心細かった私には、とても頼りになる存在に感じたし実際に頼りになった。無事に学校を選んで入学の申し込みを終えた時は本当に心底ほっとし、とても感謝したものだ。学校選びが終った直ぐ後に我が家の担当から外れたのは残念だったけれど、それでもその短い期間に私達親子に寄り添って助けてくれたことに対する感謝の気持ちは一生忘れない。

(イラスト:Pixabayより)

初めての子供で育児も不慣れなうえに障害児。そしてそういう子供に接するマニュアルはあるようで無い。本を読み漁っても一般的な内容であって、具体的な支援の仕方や行動、教え方などはなかなか本からだけでは得られない。現代は動画などで紹介してくれているものもあるが、実際に我が子に接してくれる人の様子を見ることの方が数倍分かりやすいし取り入れやすい。自分が育ててもらったようにしか子育ての仕方なんて想像もつかなかったのに、取り扱いが全く分からないような子供を目の前にして親や家族が途方に暮れることは容易に想像出来る。そんな時に一緒に目の前の子供に対する対処の仕方を考えてくれたり、見せてくれたり、アドバイスをくれたりしてくれる人の存在は、障害を抱える子供を持った親にとって計り知れない価値のあることだと思う。子供への直接の支援だけでなく、その子供を取り巻く家族や関係者にも支援があればと願わずにはいられない。

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