【第48回 家族に障害児がいます from N.Y.】コミュニケーションが難しい時の困りごと

我が子はもう直ぐ13歳になるが、未だに言葉を発することが出来ない。言葉を出そうとはしているけれど、上手く発音できないので正直何を言っているのか全く分からないことが圧倒的。言語でコミュニケーションを取るのは壊滅的に難しいレベルだ。だけれでも普段の生活はほぼパターン化しているし、よっぽどでなければ困ることも随分と減ったと思っていた今日この頃だが、改めて言葉を使ってのコミュニケーションが取れないことの難しさを感じることが続いたので書いてみたい。

ひと月前頃だが、息子が私の目の前で電動バイクに跳ねられた。跳ねられたというほど激しいものではなかったかもしれないけれど、道路上に軽く跳ね飛ばされた感じにはなっていた。左右を確認して通りを渡るという安全面での考慮が出来ない息子は、イノシシのように前方にしか意識がいかない。よって、私がしっかりと安全面を確認しなければいけないのだが、その時は止める間もなく息子がバイクにぶつかってしまった。ここで一番厄介だと思ったのが、本人に怪我の有無を確認できないことである。痛いのか痛くないのか、どこかおかしなところはないのか。聞いても無言の返事しかない。血が出るような怪我でもあれば分かるけれど、そういう大きな傷もない場合判断が難しい。ぶつかって直ぐはショックで痛みに気付けない場合もあるし、どうなんだろうと思ったけれど特に怪我もないようだし歩き方も変ではない。取り合えず様子を見ようと判断した。その後も特におかしな点も無かったので無事だったけれど、こんな場合は本当に困る。一度、トランポリンをして怪我をしたことがあったのだが、その時は尋常じゃない様子で泣き続けていたので怪我に気付けた。そしてその日の夜に病院に連れて行ってレントゲンなどを撮り、強い打撲だけで特に大きな怪我がないことを確認できた。レントゲンを撮るのはもの凄い抵抗にあい、至難の業だったことが思い出される。

そしてまた別の日。彼を連れて薬局に立ち寄った。そこは1階と2階に売り場があり、エスカレーターで上下間のフロアーを移動する形である。うちの子はエスカレーターが大好き。そして何故か薬局が好き。そして興味のある物や場所に対して猪突猛進型。その突進力と瞬発力には定評がある。もう私の呼びかけも聞こえないのか、ロケット並みの瞬発力で前方に向かってもの凄い勢いで走っていく。生憎、私と息子の間に他の人が立っていて、息子に簡単に近づくことが出来なかった。エスカレーターを下り、直ぐに息子が向かったであろう方向を見るが姿が見えず。まぁあの子の行動パターンは大体把握している。大丈夫だ、と自分に言い聞かせ店内の棚と棚の間をのぞき見しながら一周するも姿が見えず。「あれ?もしかしてもう一階のフロアーに下りてしまった?」と思ったので一階のフロアーへ下りてみる。やはり息子の姿は見えず、段々焦り始めた私。出入口付近に立っていた店員さんに、こんな恰好をした少年を見なかったか聞いてみたけれど見てないという。慌てて再び二階に上がり、名前を呼びながら再度店内を見渡し、棚と棚の間を確認しながら歩き回ってみたけれど私の呼びかけに「はーい」と応えられる子ではないので、目視で見つけなければ見つからない現実。GPSの必要性をこの時改めて感じたわけだけど、取り合えず落ち着いて考えてみた。多分、彼が私を置いてお店の外に行く確率は非常に低いだろう。そう考えた私は出入り口付近でエスカレーターを睨みながら仁王立ちして待つことにした。間もなくしてニヤついた顔をした息子がしれぇ~っとした様子でエスカレーターを一人で下りてきたので心底ホッとしたけれど、久しぶりに肝が冷えた。呼びかけても返事が出来ず、迷子になっても自分の困った状況を誰にも伝えられない子と外出するのは神経が休まる時がない。しかし現代テクノロジーは私達を応援してくれているのかもしれない。今後はテクノロジーに頼って、少しでもリスクを減らしていこうと思った出来事だった。

 

普段、普通の人達が何気なく使っている言葉を発するというコミュニケーション方法って本当に便利なものなんだなと改めて思う。言葉が発達し過ぎて誤解を招く表現方法をしてしまうというリスクもあるけれど、基本的なことの意思の疎通が図れるというのは大切。言語が発せないだけでなく、言葉の理解が乏しい人との生活はストレスも沢山ある。日常生活は何となく無事にこなせるようになっているけれど、災害や事故などの日常とは全く違う条件下に置かれた場合、我が家のような家族を持つ人達は本当に信じられないようなストレスを抱えることになるだろう。コロナパンデミックはその一端を感じさせるものだったけれど、本当にもっと不測の事態が起きたらと想像すると、震えが止まらない気持ちになるのは私だけではないと信じたい。

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