【第4回 家族に障害児がいます from N.Y. 】こだわり

お友達シリーズの新しい仲間。
N.Y.在住のMrs.NYしおママの外国で障害児を育てる日々の貴重なレポートです。

こだわり

場所見知りが始まった頃から面倒なこだわりも始まった。おやつに与えていたお煎餅があったのだが、それが割れていたりしただけで彼は大発狂。全身を使って暴れる。最大ボリュームの大声をあげて絶叫するものだからたまらない。こうなったらどうなだめても無駄。落ち着くまで待つか、新たに無傷で完璧な形を保っているお煎餅を与えるまで彼の絶叫を聞き続けるしかなかった。外出の時など、おやつとして携帯するお煎餅が割れないように細心の注意をしなければならない。
更に、そのお煎餅も決まったブランドの同じ商品でなければならず、在庫が無くなったからと似たような商品を購入しても息子は頑として別ブランドの商品は受け付けなかった。こちらからみてもさほど商品に違いはないと思ってもダメで、その傾向は今現在も同じである。

使用しているコップやスプーン、フォークなども同様で、違う形態の商品や違うブランドの物に変えようとするには困難があった。何気なく与えていた水飲み用のボトルも、古くなったり汚れてきたからと新しいものに替える時、違うデザインの物などに変えるとなると大きな抵抗にあい水も飲まなくなるので非常に苦労した。
最初にどこにでも売られているような商品を使用していたら問題はないのだけれど、その時に安価だからとか可愛いデザインだったからといった気持ちで購入した商品だと、その商品の替えを探すのが難しい。そのような時は後で大きく後悔したので、その後は息子に必要な商品を選ぶ時の基準は簡単に替えの商品が手に入るということを念頭に選ぶようになった。

彼の中にはこの食べ物はこの入れ物に入ってなければいけない、というようなこだわりがあったようで、大体いつも決まったお皿やボールに特定の食べ物を入れて出していた。
当時、息子が好んで食べていたスナックにチェリオがあった。コーンフレークのように牛乳を入れて、朝食時などに食する食べ物だが、こちらではドライな状態のまま子供に食べさせていることがよくある商品である。うちの息子もチェリオが大好物で、外出時に欠かさず携帯するスナックの一つであった。
そのチェリオを食べる時、いつも同じカップに入れて食べさせていたので、外出する時もそのカップを毎回持参するようにしていたのだが、一度、外出した際に私がうっかりしていつも使用しているカップを忘れてしまい、仕方がないのでジップロックに入れていたチェリオをそのまま息子に手渡した。案の定想定外の入れ物に入っているチェリオを見て発狂する息子。もちろんこっちの説得も全く通じるはずもなく、ただ落ち着くのを待つしかない。一度パニックに陥った息子にこちらからの呼びかけが届くことはなく、むしろ火に油を注ぐようなことになるので落ち着くのを待つしかないのだが、これが本当に苦痛になる。自然と息子と一緒に過ごすことに緊張感が生まれるようにもなった。

いつも履いている靴を新しい靴に履き替えさせる時も、激しい抵抗にあって苦労した。サイズが小さくなってきたら、新しい靴をいつも履いている靴の隣に並べて置いて見慣れさせておく。そして靴のサイズが小さくなってきたから新しい靴を履こうね、と何度か声を掛けたり新しい靴を見せたりして慣れさせて、、、と作戦を考えていたが、実際履き替えさせるとなると激しい抵抗に合ってばかりだった。夫婦二人がかりで何とか履かせるのだが、一度新しい靴を履いてしまうと、激しく抵抗していたのが嘘のようにすんなりと新しい靴を履くことを受け入れるのが本当に不思議だった。

こだわりは公園の遊具に対しても遺憾なく発揮された。ブランコに乗ることが大好きだったのだが、例えばその公園にブランコが5台あったなら、5台全てに乗ることになる。それも彼の中に乗る順番が既に決められているようで、その順番を変えることは出来ない。しかも1台に乗っている時間は結構長い。夏の暑い日など、出来るだけ木陰になっているところから乗ってもらいたかったりするのだが、予想通り激しい抵抗にあう。そのため仕方なく炎天下で黙々とブランコに乗る息子の背中を押し続けて日光蕁麻疹になったりもした。空いているブランコのどこかに他の子供が乗ったりすると、もの凄い勢いで絶叫するのでそれも凄く困ったことだった。一応言い聞かせてみたりするのだが、彼の耳には何も届いていないことがハッキリと分かる。あまりにひどい場合はブランコから強制的に下して家に帰るしかなかった。それでもしばらくの間は泣き叫ぶことになるのだが、ほかに良い解決法も思いつかず、ただただため息ばかりが出る日々が延々と続いたのだった。

あの頃に比べたら、9歳になった現在のこだわりは大分マイルドなものになっていると思う。しかし、それはこだわりが軽くなったのか、こちらが彼の持つこだわりに付き合うことに慣れたのか、それとも対処の仕方が上手くなったのか、正直よく分からないのが本心だ。

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