【第42回 家族に障害児がいます from N.Y.】初めてのサマーキャンプ / その4(息子の帰宅)

とうとうサマーキャンプも最終日。10日目を迎える。そう、それは私達夫婦の静かな日常の終わりを意味する。帰ってくるぞ、、、、あいつが。息子が帰ってくるのが嬉しいような、怖いような複雑な気持ち。迎えに行った時にどんな反応を見せるのか、密かに楽しみにしながら息子を迎えにキャンプ施設へ向かった。8月も終わりに近いとNYのアップステートの緑の多い地域の空気は涼しい。もっと息子の荷物に長袖の服を入れるべきだったな、、、なんて考えながら現地へ向かう。だいぶ早めに施設に到着してしまったが、職員の人が敷地内に入れてくれた。キャンパーの障害児達が施設外に勝手に飛び出してしまったりしないように、ゲートはきちんと閉められ管理されている。そういう配慮をみると親としては安心する。事故が起きないように、細心の注意が払われている環境の中で息子達は日々安全に過ごすことが出来ていたんだろうな、と想像出来るのだ。まぁとにかく無事であれば良い。そしてその中で楽しい経験が出来ていたら尚良しという感じだ。

MaxWdhsによるPixabayからの画像

到着して直ぐに、息子が敷地の奥の方のブランコに乗っているのが見えた。((ほほぉ~、朝からブランコでくつろぎ中かな?)と思っていたら、あっという間に遠目から私達の存在に気付いた息子。もの凄い勢いでこちらに向かって走ってくる。そのあとを担当のカウンセラー君が必死に追いかける様相だ。息子は一目散にぐんぐんとこちらに向かって走ってきて、とうとう感動の親子再会シーンか?と思ったら、親に構うことなく車の中にまっしぐらに突進。そして私が持参してきた手作りのケールチップを貪り食べ始めた。唖然。いやいや、そうじゃないだろう。まずは周りの人達に感謝の気持ちを伝えなければ。息子に車から出て、きちんとお世話になった人に挨拶をしましょうと促すと車から下りてきたけれど、何故かそのままダイニングホールに向かって疾走。そしてその息子を慌てて追いかける担当のカウンセラー君。その様子はまるでコメディ。私は追いかける気力も体力も失っているので、遠くから必死に息子の名前を呼んで戻ってくるように叫び続ける。突発的に起きる行動に対応するのも年々厳しくなっていくなぁ、、、と将来に不安を感じつつ、なんとか皆様に感謝の気持ちを伝えて帰路についた私達家族。十日ぶりに会った息子は何となくほっそりとして、頬のお肉が少しそぎ落ちていたせいかぐっと実年齢に近い顔つきになり、(あれ?キャンプ中に精神的にも少し成長したのかな?)と思わせる容貌になっていた。しかしそんな姿も自宅に戻り、いつも通り思いつくまま気の向くままに食べ続けた結果、二日ほどであっという間に以前のような幼い雰囲気を湛えた丸顔の少年に戻ってしまった。少し成長した風貌の息子の顔は魔法が解けたかのようにもうそこには無かった。ちょっと残念。しかしキャンプ中は自分の思い通りに行動したり、食べたり出来なかった反動だろうか、キャンプから戻ってきて数日は食べるかYouTubeを観るかの生活になり、あっという間にいつもの彼になっていった。そしてキャンプが楽しかったかどうかという質問にイエス・ノーの2択で質問すると、決まって返事はノー。本人的にしんどかったのだろうか?と思ったりするのだが、キャンプの動画や写真を見せると嬉しそうに興奮する姿を見るたびに、本当はどう思っているのだろうかとこちらの疑問は大きくなるばかり。ただ分かることは、このキャンプは彼にとっても私達にとっても、大きな変化の一歩だったような気がする。可愛い子には旅をさせろというが、その言葉の真意を感じることは多い。何か違うことをするのは大きな不安と心配を伴うものだけれども、少しでも変化をもたらすことは良い意味でも悪い意味でも刺激になり、そこからまた違う方向性も見えてきたりするものなのだなと感じる。息子にとってはiPadも無く、全ての我が儘が叶えられない環境は試練だったかもしれないけれど、それでも何とか乗り越えて過ごせたことは経験として今後に活きてくるだろうと感じるのだ。とにかく無事に終えたことにホッとしたのと同時に、新しいことに親子でチャレンジ出来たことが少しだけ自信になったことは間違いない。

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