【第20回 家族に障害児がいます from N.Y.】医療へのハードルが高過ぎる

アメリカでは小児科医での定期検診が毎年あるのだが、これがまたなかなかのハードルだ。うちの子は極度に怖がりだと思う。まだ何も分かっていなかったであろう赤ちゃんの頃から、小児科での検診の間は酷く泣き叫んではいたけれど、赤ちゃんだったからどうという事もなかった。それが3歳位になると抵抗する力も段々と強くなってくる。6歳くらいまではほぼ毎年、何かしらのワクチン接種があったのでより一層恐怖心が強くなったのかもしれない。まず彼は、一度も診察台の上に乗ったことがない。いつも診察室の入り口付近に置いてある椅子の上に座って、そこから頑として動こうとしない。過去に何度か診察台の上に座るように試みたが、激しく拒絶して泣き叫び床の上を転げまわるので今ではすっかり諦めた。診察台の上に座らないのは小児科の診察室内だけではなく、歯医者や眼科など今までにかかった医療関係の場所全てにおいてである。その度に動物が安心出来る場所や人の前以外では、むやみに腹を見せないということを考えてしまう。我が子の本能は動物並みなのだろうか。息子も動物と同様に、医療現場は全く安心出来る場所ではないと認識しているのは確かだ。常に恐怖の現場。次に何をされるのか全く予想が出来ないし、理解が乏しいから恐怖でいっぱいになっていると思われる。現在通っている小児科医で一番最初に検診を受けた時は、診察室に入って最初に耳の中に体温計を入れられ、そこからもう大絶叫で体重や身長すら計れたのかすら記憶にない。感覚過敏を持つ我が子は、耳の中に何か入れられるのを極端に嫌う。生まれてから今まで、耳の掃除なんて出来たことが無い。なのに診察室でなんの予告もなく、いきなり耳の中に体温計を入れられたことで大パニック。看護師はあっ気にとられて見ていたけれど、こっちはそれどころではなかった。事前に我が子は自閉症だと伝えてあっても、全ての医療関係者が特徴や対応の仕方を理解しているわけではない。仕方がないことかもしれないけれど、親としてもパニックになっている子供を落ち着かせる魔法なんて持っていない。看護師からの冷たい視線に耐えながら、あれやこれやカバンの中から用意してきた気を引きそうな玩具や、大好きなおやつなどを見せてみるけれど一度興奮して暴れている息子の目の中には何も映っていない。ただただ落ち着くのを待つのみだ。身長、体重を計るのも一筋縄ではいかない。体重計に乗るのを酷く恐れるので、体重計の上にステッカーを置いて気を引き、徐々に慣らしていって体重と身長を計ったこともある。そのような経験があったので、それ以降は定期検診に行く前に自宅で熱や身長、体重を計って行くようになった。そして血圧も暴れるのできちんと計れたことは殆どない。

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視力に至っては計ったことすらない。多分視えてはいるのだろうけど、眼鏡がいるほど近眼かどうかも不明である。ドクターも一応聴診器を当てたり、お腹のあたりをちょっと触診したり目の中や耳の中をサラッと診てくれたりするけれど、じっくりと診察出来ているわけではないので、何となく様子を見て元気そうだから大丈夫でしょうという診断に落ち着く。血液検査と尿検査をする以外は、殆ど検診の意味を成していないと思われる。でも無理強い出来るものでもないし、ドクターもこの状態を受け入れてくれているので有難いと思っている。毎年検診の時期が近づいてくると気分は最大にブルーだ。ワクチン接種とか血液検査が予定されていたりするとブルーの度合いは益々増す。注射は一番避けたい分野。インフルエンザの予防接種も避けている。しかし避けることのできないワクチン接種や定期的に行わなければいけない血液採取があるのだ。3,4歳の頃にうけた血液採取ですら、大人3人で暴れる息子を診察台に押さえつけて何とか血液を採取したくらいだ。成長と共にパワーアップする息子を抑え込んで注射を打つのは本当に至難の業。去年、何とか強力な看護師と私でタッグを組み、息子を取り合抑えながら別の看護師さんが何とか血液を採取をすることが出来た。今年はどうなるのか、、、本当に医者に足を向けることが苦痛である。

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歯医者はもっと大問題

歯科医での定期検診は6か月に1度ある。この年に2回の歯医者への訪問が更に大きなハードルだ。歯医者でも依然診察台には座らないが、そもそも診察室に入ることすら怖がって後ずさりしまくる。何とか診察室に入っても窓際にある椅子から絶対に動かない。そして歯科医が口の中を見ようとしても絶対に口を開けない。現在通っている歯科医は、うちの子のような自閉症の子供も受け付けてくれる歯医者さんだ。なので自閉症の子供に対しても大変理解があるので、子供の恐怖を取り除くように時間をかけて安心させるようにしながら治療を行ってくれるのだが、我が子はなかなかの頑固者。全然心を許さない。歯のクリーニングの為、使用する電動のブラシを手の甲に当てて、ただのブラシで全然怖いものではないのだよ、ということを伝えようとしてくれたり色々試行錯誤してくれるのだが、全く何も出来ない時もあった。本当に心が折れそうになる。連れて行ってもちゃんと口の中を見ることが難しいのだから、歯医者に連れて行くのを止めようかと思ったりもするのだが、息子の虫歯を極端に恐れる私としては止めることも恐ろしい。息子が4歳くらいの頃に彼の前歯に黒い虫歯のようなものを見つけて、慌てて歯医者さんを探したのが始まりだった。その頃はまだ息子は小さかったので、暴れても私が診察台の上に寝そべって息子を後ろから羽交い絞めにする形でレントゲンが撮れたのでよかった。そしてレントゲンの結果、予想を超える10か所ほどの虫歯が発見されたのだ。その頃、彼に歯磨きを施すのは本当に困難だった。感覚過敏のせいなのか、口の中に歯ブラシを入れることを非常に嫌がった息子は毎日大暴れ。何とか歯ブラシを口の中に入れることが出来ても、口を開けようとしないので適当に歯ブラシを動かしていたのだが、全然磨けていなかったのだろう。しかし心のどこかで、甘い飲み物は一切飲まず、甘いお菓子も全く食べない子だから虫歯になんてならないんじゃないだろうか?という淡い期待があった。しかしレントゲン結果を知らされたとき、私は本当に自分でもびっくりするほど落ち込んだ。そして治療するのに全身麻酔が必要だと聞いて更に落ち込んだ。その時の治療は全身麻酔をされて記憶が無いであろうにもかかわらず、息子にとってもトラウマになったようで、その治療後から更に歯医者を恐れるようになったような気がする。そして私の方はその時の経験があるので、息子の歯磨きには異常な執念を燃やしてしまうのだ。今後、また歯科治療が必要になった場合、また全身麻酔を受けて治療することが必要になると思われる。その場合、麻酔を受ける十数時間前からの絶食に息子が発狂することも目に浮かぶし、治療費が我が家の家計に与える衝撃についても考えると本当に心はブルーを超えてダークブルーになるのだ。

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