久米宏さんのラジオ番組『久米宏のラジオなんですけど』が終了しました。
やはり一時代が終わった感はありますよね。
まさにテレビ全盛の一番輝いていた時期に、長年「ぴったしカンカン」「ザベストテン」「ニュースステーション」という各局看板番組のメイン司会者を張り続けた方です。正確には計算しようもありませんが、露出量の累積を広告換算すれば下手すれば兆円超えの男です。
でも特にラジオは残酷なところがあります。しゃべり手の息づかい、間合いの機微が生生しく伝わってきます。
それでも辞める理由を問うと「本当に老化なんです。民放ってみんなタダだと思ってるけど、スポンサーがお金を出してる。だから、それに見合う放送をしないといけない」と持論。TBSラジオ ときめくときを。ラジオ放送局「TBSラジオ」のサイト。TBSラジオの周波数は。PCやスマートフォンではradiko(ラジコ)でもお聴きになれます。全国のラジオ34局ネットワークJRN(JapanRadioNetwork)のキーステーション。記事や番組内容、オンエア楽曲、最新イベント・グッズ情報などのコンテンツを毎日更新中!!
ご本人も老化だとおっしゃているぐらいですが、最近の放送では滑舌の悪さはさすがの久米宏さんでも否めないところがあった。晩年の永六輔さんのラジオ放送をチラッと想起させるものがありました。
人の何百倍も達者な方が、衰えると、聴いている方はかなり切ないものがあったのも事実です。
振り返れば、功罪の功を言えば、そりゃ達者でした。とにかくテレビMCとして。
立て板に水とはまさにあのことですよね。次々と言葉が流れ出るけれどイヤらしくない。スタイルの良さやルックスのスマートさも相まってでしょうね。軽妙なれど軽薄ではない。特に「ザベストテン」というエンターテインメント番組でその軽快さが見事に生きていました。
「久米宏のテレビスクランブル」では、たけし、横山やすしという猛獣を久米さんでしかなし得ない猛獣使いぶりで、
斬新だなと思ったのは、久米さん自身がゲストや回答者に反応して、いつも笑っちゃったりしていたんですよね。そんなスタイルも番組を明るく華やかにしましたし、それまで絶対ニュートラルな立ち位置がMCの王道だったでしょうが、久米さんは個を感じさせる司会者として先駆けだった。
でも功罪の罪の方を言えば、「ニュースステーション」など報道番組を情報番組としてバラエティ要素を加えていく中で、MCである久米宏さん自身の私見を加えていくという手法はどうだったのでしょうか?
一昔前のテレビ人は文化教養に対する強烈なこだわりを持っていたと思います。特に久米さん出身のTBSは、女性の制作者やジャーナリストもまだまだ女性が一線で活躍できた仕事の現場がほとんど存在しなかった時代から多かったですしリベラルの総本山で、まさに言論の自由、天下国家を語らざれば人にあらずという気風が間違いなくありました。もちろんメディアの人間として、談論風発は良いことでしょうが、やはり公共の電波ということを考えれば、一個人の見解ばかりが偏って紹介されるということには問題は多々あったように思います。
実際に久米宏さんの私見は、いつも非常にステレオタイプな「プチ反権力、山の手プチブル・リベラリズム」の範疇だったように思います。
まさにかつてのTBS、テレビマンの文化ですが、軽い反権力のスタイル。実際はみんな山の手のちょっと良いところのお坊ちゃんお嬢ちゃんの「私何にも考えてないノンポリじゃないからね」というポーズだったりもするわけです。世界的にも歴史的にも非常に典型的なわけですが、高学歴の教養指向はしばしばリベラルの装束をカッコ良いと感じるようです。
この点、間違いなくテレビ朝日の玉川徹氏を生んでしまう源流を久米宏さんが作ってしまったように思いますね。
そういえば、「ニュースステーション」後任の古舘伊知郎さんも、なんとか鋭い見解を示そうと気張ってしまって、重苦しくて辛そうだったじゃないですか。別にMCはMCで軽妙に取り廻すだけで良いのに、妙なところに力コブを作ってしまっていました。間違いなく久米宏シンドロームの影響だったように思います。
そんな久米宏さんのつまらない部分がラジオ番組『久米宏のラジオなんですけど』では、残念ながらいかんなく発揮されてしまっていて、正直まったく面白くありませんでしたね。
MCとしては圧倒的に達者だった久米さんも、ジャーナリストや政治評論家としては凡庸でステレオタイプに過ぎなかった。
やはりそこは別の才能なのでしょうね。
もちろん私自身、久米宏さんの軽妙さが大好きだっただけに残念な気分もありますが、困った久米さんの部分もあったことを考えると、なんとも複雑な気分でこの番組終了劇を眺めてしまうのでした。
<写真:久米宏ラジオなんですけどホームページ>
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