新型コロナウイルス流行の収束がなかなか見えてきません。日本はまだなんとか小康とも言って良い状態を保っているように感じなくもないですが、欧州が厳しいですよね。アメリカもまだまだわからない。

大前提として、かなりアナーキーな方を除いて、誰もオリンピックの延期や中止を望んでいる人はいないはずです。特に、ギリギリの調整で準備しているアスリートにとっては選手として死活的な状況だと思います。アスリート以外の人間にとっても、大なり小なりこの国家的・国際的イベントにまったくなんの関係もない人はいませんから、それぞれ大きな影響があります。私自身も仕事上、正直まったく影響がないわけではもちろんありません。中止・延期は考えたくもないという切なさはあります。
でも敵が、新型ウイルスですからね。どんなに切なくても現実的な対応を考えざるを得ない時期かもしれません。
すでに、延期の具体論については様々な論点が出てきていますね。「アスリート選考や調整」「他主要大会とのスケジュール」「放映権料を大きく出している米TV局の意向」「会場確保」「チケット払い戻し」「オリンピック憲章との整合性」などなど。その詳細は各メディアに譲りますが、そもそも新型ウイルス収束の科学的見通しもままなっていないわけですから、検討は困難を究めます。
そしていつまで延期するだけとっても、「本年度内延期」「1年延期」「2年延期」3年延期はあまり聞きませんがパリオリンピックと玉突きさせて「4年延期」パリオリンピックの次で「8年延期」。オプションだけ考えればいくらでも候補を考えられます。もちろん8年先となれば人間何が起きるかわからないわけですからね。ちょっと想像もつきません。


となると選手村候補は新たに準備しなければなりません。そもそも選手村候補地は、2016年オリンピックに東京が立候補した際、有明1丁目の都有地を想定した案でIOCに提案し、選手村用地としては手狭なことを指摘され、2020年晴海案で仕切り直した経緯があります。
晴海が選手村として利用できなくなれば、そう簡単に候補はないかもしれませんがあえて下記考察します。

中央防波堤は本コラムで何度も指摘してきた通り、東京都のマスタープランナー丹下健三が描いた都市軸のど真ん中に位置する東京の未来です。羽田空港からも近く、すでに接続道路は整備中。巷で噂されている銀座駅から築地、晴海、豊洲市場、有明、羽田空港に至るメトロ新線の新設も含め一気呵成に検討すれば夢のあるプランかもしれません。
一点懸念があるとすれば埋め立てて時間が立っていないエリアですからね。本格的な建築物にはまだ不向きかなという気もします。

そして二つ目の候補は、有明4丁目です。
ほとんどの皆さん「どこ?」という場所ですが、国際展示場「ビッグサイト」と「テレコムセンター」のある青海を挟んだ埋め立て地です。現在は倉庫として利用されていて、人っ子一人いませんが、まさに昔の晴海倉庫街のイメージで、広さも晴海選手村にそん色ないように見受けられます。さすがに今の様子を見ると、辺鄙すぎてしまって選手が嫌がりそうですが、ここも丹下健三の都市軸ど真ん中。銀座4~5km圏ですので、先ほどの羽田空港~銀座の地下鉄新線を前提にすれば見違える土地のように思います。

すでに更地になっているのでなんでも想像しやすいというメリットもあります。

(写真:AC)
広さは晴海よりは少し狭いかもしれませんが、何せ銀座に隣接し築地市場以来の文化伝統を感じさせる場所ですからね。IOCも選手も大喜びするのではないでしょうか。
国としては、IOCとの交渉の切り札かもしれませんね。交渉が日本の意思に反していった場合に、提供できるメリットとしてズバッと切るという。実際築地市場跡地が選手村になればイベントも食関連でガンガン盛り上げられそうですね。

(写真:AC)
一点、とにかく東京に残された最後の超一等地ですから、晴海のように選手村で使った建物をリノベーションして分譲するイメージはちょっとわきません。ここに本格的に建てるならば、それこそハイエンドのレジデンスしかあり得ませんから、むしろ選手村は仮設で良いかもしれません。例えば建築家の坂茂氏など、紙や段ボールの建築物に長く取り組まれていますよね。

(写真:坂茂建築設計)
くれぐれも、もちろん延期のことなど考えないで済めばそれが私も一番良いのですし、年内延期ぐらいで収まってくれればみんな不幸中の幸いでしょうが、今の状況を鑑みると、私自身としても色々最悪のケースを含めて検討まではしておかざるを得ない状況ゆえの以上考察です。
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