批評って正直、口が悪いぐらい否定的な方が反響が大きかったりします。だからネットメディアの世界には新聞や雑誌のような印刷メディアと違って、結構偉い人が、かなりカジュアルな口汚さで過激に批評するということになりやすいですね。でも、やはりちょっと品が無さすぎて不快感もありますし、何より感情的過ぎて記事に信頼性がなくなるようには思います。
私の理想は、池波正太郎先生の「食の随筆」です。大家にして超グルメな池波正太郎先生の食に関する随筆って、とにかく愛に溢れているんですよね。いかに食べることを楽しみにしていて、プロが美味しいものを供してくれることをありがたく思っているか文章からイキイキと伝わってきます。ほとんど否定的な部分がないのに、奥深い評論として成立している。北王子魯山人のように辛辣の極みのような評論も大好きなのですが、池波正太郎先生のような達人レベルの評論は本当に憧れます。どうしても褒めるスタンスで批評すると、そんな意図はまったくないのにちょっと宣伝的な雰囲気になりやすくて苦労するのです。

今回はそんな禁を破って、少々辛口な記事になりました。
ネット上で賛否が沸き上がっている、ローソンプライベートブランドの新ブランディングです。
みなさんはどう感じられますか?
プロって、自分の専門領域を掘り下げますから、ストイックになりがちだと思います。言いかえれば独善的です。もちろん独善的なぐらい自分のスタンスがなければ仕事にもならないと言えますが。
デザイナーも、ほっとくと超ミニマリズムのゴキゴキにシャープなデザインを追求しがちなんですね。
ちょっと領域は違いますが、感染症の専門家が経済が崩壊しようが、子供が学校に行けなくなろうがおかまいなく、ウイルス撲滅だけに猛進しがちなメンタリティーと似ています。
要は視野狭窄に陥りやすい部分がある。
だからこそ、実は良いプロデューサーがなんとしても必須なんですよね。市場や生活者、クライアント、社会性、予算などデザインのカッコ良さだけではない視点でデザイナーとコミュニケーションしながらより最適解に近いものに近づけていくという。
例えば、私が書いているような小論考でさえ、編集者の方が一度見てくれなければ怖くて世の中に出せはしません。やはり創る側は、思い入れも熱量も高いけれど、どんどん自分で掘った狭い穴に深く深く入っていってしまう傾向があります。
よく良いデザイナーだけいれば良いものができる近道と考えるクライアントがいるのですが、それは正しいとは言えません。ユニクロの柳井社長と佐藤可士和氏のコラボの様に、佐藤可士和氏自身がプロデューサー的能力にも強みがあって、柳井社長自身もプロデューサー的能力があるというレアケース以外、デザイナーとクライアントだけのコラボはそうそう上手くいかないはずです。
そういう意味では、今回のローソンさんプライベートブランドのケースでは、佐藤オオキさんという優秀なクリエイターを起用しながら、ちょっとローソンさんサイドのブランドプロデュースの経験知不足が見て取れてしまうかな、と正直感じています。
もちろん、私も紹介した「悪魔のおにぎり」や「Uchi cafe」などオリジナル商品開発での成功体験あればこその取り組みだと思うのですが、正直今回は、デザイナー的「カッコ良いのが一番」「読みにくくても分かりにくくてもシンプルな方がカッコ良い」「漢字より英文字の方がカッコイイ」という感性にまるまる引っ張られてしまったと思います。
記事の更新情報をお届けしています。ぜひフォーローください。
Follow @ryosukeakizuki
facebookはこちらから。