「政治は生活だ」と言ったのは、田中角栄ですが、まさに至言だと思っています。
日本では「武士は食わねど高楊枝」と、政治や経済を上に見てリアルな生活を軽く見る傾向が強いですが、生活に価値観や文化がなければ何にもならないと思っています。


その原因は色々ありますが、やはり伝統的な建築生活様式から西洋式の建築生活様式に見様見真似でしてきたものの、本来の西洋型の生活様式の真髄をまだまだ理解できていないからということもあるように思います。
しかながら、昭和の高度成長期以降、どんどん日本の住宅も洋風化し、今や生まれたときから畳での生活を一切経験したことがない世代も少なからずです。椅子と机、ソファーの置き家具をムヤミに並べ立ててみても空間を作るための文法を根本的に理解していないがゆえに、本来のウエスタンスタイルの快適な空間を実現できない場合がほとんどであるように思うのです。
なぜそう感じるかとというと、私も本格的にヨーロッパで生活した経験があるわけではないのですが、それなりに公私の目的で訪問したヨーロッパのホテルやレストランなどで、感じるコージーさ。英語のcozy、そうコージーコーナーのコージーを思い起こしたとき、日本のホテル、レストラン、特に個人住宅でそれを実現できている例が少ないように感じるからです。コージーという言葉「心地よい」という言葉ですが、狭い空間や温かい雰囲気に包まれるようなニュアンスがあるはずです。
ロンドンやパリも大都会ですから、地価は東京以上に高い。それがゆえにホテルなど四つ星クラスでさえ結構空間としては狭くて、そこはアメリカンスタイルのホテルと随分違いますが、こじんまりとした空間をまさにコージーにしつらえている。ホテルのラウンジやバーなどはどこであっても本当に心地よい。
本来、和室よりも大きな空間を必要とするだろう洋家具の部屋なのに狭くてもむしろ心地よい空間を実現していることにいつも驚かされてきました。
ちなみに日本でそんな空間性を感じさせてくれるのは、ダンヒル銀座店3階のカフェラウンジで、アンティークのハイバックソファなどで区切られた空間が本当にロンドンを思い出させる快適な空間でしたが、改装してアンティーク家具などもなくなって日本の普通のオシャレなカフェラウンジになってしまいました。
(素敵ですけど今は普通ですね。写真:PRTIMES)
筆者の方の、素敵なイラストで、英国の一番狭いアパートメントからお城まで、典型的なライフスタイルのリアルを紹介してくれています。
とにかく、日本の新築志向=普請文化と違って、古いことがネガティブではなく、きっちっりメンテナンスされていればむしろ高く評価されるがゆえ長く大事に使われる英国の住宅事情。
とにかく愛おしむように住人が磨き上げて快適な空間を実現していること、またその執念に驚かされます。
とは言え、実用本的な内容ではありません。あくまで目で見て楽しむスタイルの本かもしれませんが、眺めているうちに、確実にしみてくる西洋人、イギリス人が考える「豊かさ」の方向性イメージが具体的に立ち上がってきます。
やはり手に取ってページをめくる豊かさ。そんなコージーをアフタヌーンティーでもしながら楽しむのがよろしいように思います。

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