暖炉脇お気に入りソファーのようにコージーな本 「英国の間取り」

「政治は生活だ」と言ったのは、田中角栄ですが、まさに至言だと思っています。

日本では「武士は食わねど高楊枝」と、政治や経済を上に見てリアルな生活を軽く見る傾向が強いですが、生活に価値観や文化がなければ何にもならないと思っています。

別に高級であれ贅沢であれと考えているわけではありません。質素でも豊かな生活空間は存在することは間違いありませんし、むしろ日本人はそんな等身大で無駄のない空間感覚を磨いてきた民族だと思っています。茶室などはまさにその典型ですし、それ以前にも「方丈記」など興味深い思索性にあふれています。
現代の「方丈庵」で、日本人がコロナ禍をしのぐ理由
小学生の我が子に日本の歴史を教えています。 小学生向けとは言え、自分でも曖昧になっていた日本史の学びなおしの良い機会になっています。 「応仁の乱」前と後で、日本の歴史には大きな分断があるというお話もあるようですが、 つくづく現代日...
ただし、いくら質素だからとい言って無頓着というのはとにもかくにも残念なもので、多くの平均的日本人の都市生活者は、狭い生活空間をありあわせの和洋折衷様式で日々なんとなくやり繰りして過ごしているのが実態であるように思います。
世も末。 40平方メートル住戸への住宅減税の異常さ。
なんと住宅ローン減税の対象が50㎡以上から40㎡以上に引き下げられるとのこと。 政府・与党が2021年度税制改正で検討する住宅ローン減税の見直しの全容が判明した。13年間の控除が受けられる特例は入居期限を22年末まで延長する。対象物件の面...

その原因は色々ありますが、やはり伝統的な建築生活様式から西洋式の建築生活様式に見様見真似でしてきたものの、本来の西洋型の生活様式の真髄をまだまだ理解できていないからということもあるように思います。

書院様式など綿々と歴史を積み重ねてきた和の建築生活様式はそれは洗練されたものだったと思います。基本は広くもない畳敷きや板敷の空間を障子やふすまで軽快に間仕切りして臨機応変に広さを調整しながらも、食事、宴会、団らん、就寝といかようにも不自由なく、しかも美しい生活空間を実現してきました。まさに「陰翳礼讃」で谷崎潤一郎が表現した通りの美意識がそこにはあったと思います。
Amazon.co.jp: 陰翳礼讃 (中公文庫): 谷崎 潤一郎: 本
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しかながら、昭和の高度成長期以降、どんどん日本の住宅も洋風化し、今や生まれたときから畳での生活を一切経験したことがない世代も少なからずです。椅子と机、ソファーの置き家具をムヤミに並べ立ててみても空間を作るための文法を根本的に理解していないがゆえに、本来のウエスタンスタイルの快適な空間を実現できない場合がほとんどであるように思うのです。

なぜそう感じるかとというと、私も本格的にヨーロッパで生活した経験があるわけではないのですが、それなりに公私の目的で訪問したヨーロッパのホテルやレストランなどで、感じるコージーさ。英語のcozy、そうコージーコーナーのコージーを思い起こしたとき、日本のホテル、レストラン、特に個人住宅でそれを実現できている例が少ないように感じるからです。コージーという言葉「心地よい」という言葉ですが、狭い空間や温かい雰囲気に包まれるようなニュアンスがあるはずです。

ロンドンやパリも大都会ですから、地価は東京以上に高い。それがゆえにホテルなど四つ星クラスでさえ結構空間としては狭くて、そこはアメリカンスタイルのホテルと随分違いますが、こじんまりとした空間をまさにコージーにしつらえている。ホテルのラウンジやバーなどはどこであっても本当に心地よい。
本来、和室よりも大きな空間を必要とするだろう洋家具の部屋なのに狭くてもむしろ心地よい空間を実現していることにいつも驚かされてきました。

ちなみに日本でそんな空間性を感じさせてくれるのは、ダンヒル銀座店3階のカフェラウンジで、アンティークのハイバックソファなどで区切られた空間が本当にロンドンを思い出させる快適な空間でしたが、改装してアンティーク家具などもなくなって日本の普通のオシャレなカフェラウンジになってしまいました。

(素敵ですけど今は普通ですね。写真:PRTIMES)

そんな、ウエスタンスタイルの生活空間の文法の実態を教えてくれる、無茶苦茶チャーミングな本が今回ご紹介する「英国の間取り」

Amazon.co.jp: 日本でもできる! 英国の間取り: 山田 佳世子: 本
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筆者の方の、素敵なイラストで、英国の一番狭いアパートメントからお城まで、典型的なライフスタイルのリアルを紹介してくれています。

とにかく、日本の新築志向=普請文化と違って、古いことがネガティブではなく、きっちっりメンテナンスされていればむしろ高く評価されるがゆえ長く大事に使われる英国の住宅事情。
とにかく愛おしむように住人が磨き上げて快適な空間を実現していること、またその執念に驚かされます。

とは言え、実用本的な内容ではありません。あくまで目で見て楽しむスタイルの本かもしれませんが、眺めているうちに、確実にしみてくる西洋人、イギリス人が考える「豊かさ」の方向性イメージが具体的に立ち上がってきます。

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