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「広告」と「広報」 似て非なるものの悲劇

こんな記事があったんだと知らなかった連載をnewspicksにpickされていたので見つけました。
お偉いさんから「広報はタダだから……」と言われて (日経クロストレンド)
NewsPicks でコメントを読む

鈴木 正義氏という。NECパーソナルコンピュータの広報部長さんの「風雲!広報の日常と非日常」という連載の第15回記事のようです。
冒頭いきなり、こんなエピソードが紹介されています。

「私は怒っています。どうしたらいいでしょう」
 先日とある企業の広報の方から、相談といいますかボヤキを聞かされました。話を聞くと、あまりニュースバリューのないネタを「広報しろ」と会社幹部から指示されたそうです。それに対して言い返したことろ、「どうせ広報なんてお金かからないんだから、どんどんやればいいじゃない」と言われ、さらに「そこのネタの弱いところを売り込むのが広報の仕事でしょうが」とまで言われてしまったとのことです。

これは、まさに典型的な広報あるある。である。(あるx3回)
実は「広報」という業務の特性を正確に理解している人は世の中に非常に少ないです。
私も大手広告代理店に勤務していた端くれなので、往々クライアントから「広報」業務も依頼されました。日本が誇る大手代理店はワンストップでの総合的マーケティングサービスが身上なので、基本的にノーはないのです。もちろん社内の広報・PR専門部署の専門スタッフと連携してのサービスを行うのですが、これが他のあらゆる業務とまったく異質なもので最初の頃非常に面喰いました。

簡略化して言いますと、「広告=お金を出してそれに見合ったコミュニケーションを行う。」「広報=お金を出さずにワンチャン、メディアに取り上げてもらう。」という基本属性の違いがあまりに大きすぎるのです。
「広」の字も共通ですし、世間に知らしめるという最終目的が同じであるにもかかわらずまったく異質な仕事となるのです。

<Ivana DivišováによるPixabayからの画像>
もう少し整理すると「対価性が定義されているのが広告。対価性がないのが広報」となりますでしょうか。正直、私はじめ多くの広告業界の人間は「広報」業務が苦手なはずです。普段行っている99%の仕事と違い、「広報」業務は、予算をかけてもそれに対する露出量や露出の仕方をコントロールできないからです。普段「広告」の仕事ではそれらをコントロールすることが仕事にも関わらずです。正直、広報の専門スタッフから「出てみないと分からない(もっといえば出るかどうかわからない)」とか「記者がどう書くか分からない」という説明を聞いた時何度絞め殺そうと思ったかわかりません。いや本当に予算がまったくかからなければ良いのですが、実際にはプレスリリースを書いたり、それをメディアに配ったり、記者に説明行脚したり、テレビのプロデューサーに取り上げてくれるよう働きかけたり、根回ししたりと、膨大な人件費=フィーがかかるのですから「出るかどうかわかりません」と言われても、クライアントにどう説明するんだー!となるわけです。
それゆえ、PR会社という独立した業態が営々あって、大手総合代理店をもってしても痒いところに手が届かないサービス需要の受け皿となってきたわけです。(そのPR会社も、大手広告代理店の資本参加に再編されつつはありますが)

何より困ってしまうのは、冒頭の鈴木広報部長もおっしゃているように、ほとんどの経営者やマーケティング関係者さえこの事実にあまり自覚的でないことなのです。よくあるのは、私の若い頃と同じで、「広報」を「広告」の一亜種と漠然と見做していて、予算や人件費をかけたら意図通りの露出があって当たり前と素朴に思い込んでいます。
お偉いさんや、クライアントによくある反応は。「なんでそんな工数と予算使って露出しないんだよ?」とか「なんでそんな工数と予算使って意図と違う取り上げられ方になるんだよ?」という勝手なお叱りが「広報業務」には飛び交いがちなのです。

逆に言えば、「広報」の特性をキッチリ理解している経営者はすごく得をすると思います。そもそも出発点が、基本はお金や人件費を使っても思い通りの広報活動は一筋縄ではいかないはずである。という非常に正しいところから出発しますから広報スタッフに無理難題を言いモチベーションを下げることもないでしょうし、メディアへのアプローチも戦略的に取り組めます。

なんとなくですが広報の得意な経営者を思い浮かべると、スティーブ・ジョブス、ユニクロの柳井氏、この二人はかつてメディアの記事で大いに痛い目にあいながらも、その中でメディアとの付き合い方を悩み抜いて達人の域に達した人たちのように思います(一方で、歴代広報スタッフの苦労はいくばくかとお察ししますが、、、恐らく死屍累々ではないでしょうか)

<写真wikipedia>
孫さんや三木谷さんも、ネガティブ論調に傾きかねない世の論調を、ギリギリ自ら体を張って逆流を防いでいるように見受けられます。
こう考えると、みんなオーナー経営者。メディアという制御できないものを相手にする限り、自分のふんどしで腹をくくれないとだめだとつくづく思います。
逆に言えば、サラリーマンという限られた権限と身分で、会社を背負ってメディアという鵺(ヌエ)のような存在と戦う、世の広報マンたち。今回の鈴木広報部長の記事を読むにつけても、その苦労がしのばれるのでした。

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