結構ビックリしました。
東急が、老朽化した東急百貨店本店と本店に隣接する複合文化施設のBunkamura(東京都渋谷区)を一体的に建て替える方向で検討していることが12日、分かった。令和4年中にも休館し、5年度に着工する方向で関係者と協議している。
(中略)
Bunkamuraは平成元年9月に開業。施設内には、東京フィルハーモニー交響楽団が定期演奏会を開く音楽ホールのオーチャードホールや、演劇やコンサート、歌舞伎などの舞台芸術の公演が行われるシアターコクーンなどがあり、東急百貨店本店と連絡通路で結ばれている。 SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイトSankeiBiz(サンケイビズ)は産経新聞グループの経済情報サイトです。「仕事・キャリア」「自分磨き」を主なテーマに、ニュースはもちろん、気鋭の経営者や識者が執筆する連載・コラムなどビジネスパーソンの知的好奇心を満たすコンテンツをご覧ください。
東京に住んでいる方でクラシック音楽好きな方であれば、何度となくオーチャードホールには通ったはずです。東京文化会館やサントリーホールほど巨大ではないけれど最大2150席は十分なキャパシティで東急のプライドを感じさせる品格のあるホールは、ステータス性十分でそれこそタキシードにドレスで出かけたくなる雰囲気を持っています。
(写真:Bunkamura)
場所が、日本屈指の高級住宅街”松濤(しょうとう)”、そうあの麻生さんの邸宅などがあるあの松濤に隣接していることもあり、渋谷駅からはちょっと離れていることもあり、なんとも鷹揚な雰囲気がありました。
一方で、道の向かい側は渋谷百軒店(ひゃっけんだな)にも連なるわけですから、正反対の喧騒とも正対していいて、表と裏、静謐と猥雑の境界に位置するような不思議な文化施設でもありました。
(写真:AC)

優雅で贅沢な空間構成なんですよね。正直、動線やトイレなどの設備は使いにくくて困るのですが、どうでもいいような余白スペースがあちらこちらにあって、まさに文化的な建物と誰もが感じる空間でした。
(図:Bunkamura)
構造も、大ホールが入るぐらいの建物ですから、堅牢でしっかりしたもの。使われる石材やディテールの凝り方からもお金がかかっていることがビシビシ感じられる建築物でした。建設した東急建設としてもまさに社の威信をかけたこだわりを感じさせてくれる建築です。
(写真:Bunkamura商店街)
そんなスゴイ建物、そしてホールをもう建て替えとは!
(写真:AC)
さすがに驚きましたよ。
いや分かります、確かに隣接する東急百貨店本店、商業施設としては古いですよね。昭和42年つまり1967年竣工の建物だそうですし。実際、大東急のフラッグシップとして考えると、独特の風格はありましたが、駐車場など設備関係はやはり最新の施設に大きく見劣りする分使いにくかった。
実際、経済論理から言っても、百貨店と文化村を一体再開発すれば建築面積も大きく増やせるでしょうし、お得だろうことは百も承知です。
でも、どう考えても100年以上は構造上絶対もつだろうお金をたっぷりかけた近代建築の秀作を、あっさり30年ちょっとで取り壊すってどうしても残念な気持ちがしてしまうんですよね。
もったいないともちょっと違うのですが、そのお金があるならばBunkamuraはそのまま生かして、他でそのお金を使って欲しいというか。
他にも、そんな気持ちにさせる再開発はたくさんあるんですよ。
一例だけあげても、東京銀座一丁目の「ホテル西洋銀座」。もともと日本最大のスクリーンを誇るシネマスコープで有名だったテアトル東京を1983年に再開発した五つ星ホテルで、これもまたこだわり抜いた巨匠菊竹清訓氏の名建築でしたが、あっさり2019年には「コナミクリエイティブセンター」ということでオフィスビルとして建て直されてしまいました。

とは言え、百も承知なんですよ。筆者も。
要は、日本人は新築好き。普請好き。これに尽きるんですよね。本音として。
やはりこの「なんとなく新築が気持ち良い」という感覚、木造の文化、地震のある国で長く培われたものなのでしょうね。伊勢神宮も式年遷宮で20年に一度躯体としてのお社は新築に移り変わるわけですし。
「穢(けが)れ」とか「禊(みそ)ぎ」という、日本人独特の感性にも直結する部分です。
そんなこんなで、100%文句を言いたいわけでもなく、新築される建物はやはり楽しみにしつつ、結構惜しい建築物がこの世から消えてしまうのは事実なわけで、あーでもないこーでもないと呟かせていただきました。
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