原宿67億円マンションに見る、超富裕層価値観の変化

原宿で67億円のマンションが売り出されているそうですね。

史上最高「1部屋67億円」のマンションが誕生 買うのは誰?
週刊新潮 2021年4月1日号掲載

こう書かれた新築マンションのパンフレットが配布されたのは3月中旬のことである。ただし、枚数は全部で400枚程度。配布先は上場会社のオーナー社長など限られた相手だけだ。

何しろ、パンフレットに書いてある値段が〈303・27平方メートル 17億500万円〉である。売り先が一般人でないことは明らかで、一番高い部屋は67億6千万円にものぼるという。広さは約627平方メートルである。
史上最高「1部屋67億円」のマンションが誕生 買うのは誰?(全文) | デイリー新潮
〈東京メトロ「明治神宮前〈原宿〉」駅徒歩2分に、全14邸の邸宅が誕生〉…
坪単価3500万円と考えれば、ちょっとした都心マンションと比較しても軽く10倍ですから、とんでもない金額に違いありません。
ラフォーレ原宿の裏と言えば、存外に密集した住宅地ですからね。いわゆる青山あたりに多い、小規模低層の超高級物件ということなのでしょう。

(イメージ写真:AC)
  
もちろん68億円あれば、どんな豪邸でも建てられますが超富裕層の居住に対する意識は変わってきていると思います。
いわゆる一戸建て離れですね。
昭和の成功者は、田園調布、成城学園に豪邸を構えることがステータスでした。
「田園調布」「成城学園」が成功者の住所でなくなった理由
ちょっと面白い記事を読みました。 「赤坂の繁華街の裏手には高級タワーマンションが立ち並んでいます。社長のステータスが、閑静な住宅地の一戸建てから繁華街の高級タワマンに変わっているのでしょう。都心のタワマンはセキュリティを重視するところが多...

   
その背景には、二つの大きな思想があると思います。
一つ目は、歴史的なシンボリックに成功の記念碑を表象したい意識、もっと下世話に言えばパワーの誇示。まあ有り体に言えば古今東西「お城」の現代版を築きたいという方向性です。
二つ目は、自然志向と領地志向。要は誰にも邪魔されない自分の敷地内で豊かな自然を満喫したいという方向性です。だからこそ昭和の豪邸は、イギリスのハワードが提唱した「田園都市」コンセプトの「田園調布」とか「成城学園」に多いのも当たり前なのです。

ではなぜ超富裕層の居住地に求めるものが変わったか。
まず一つ目の「力の誇示」について言えば、超富裕層もっと言えば企業が特にセキュリティ面やプライバシーの側面で「力の誇示」よりも匿名性を求めるようになったことが大きいと思います。
例えば、企業においても近年新築されたソニーやサントリーの東京本社は、言われなければ気づかないような高さ、規模感、地味な外観に徹するようになりました。テロに狙われやすくなるぐらいで、目立っても何の得もないからです。
誰もが知る豪邸に住んでいれば、「あ、柳井さん今日はゴルフかな?」とか、出入りするだけでも行動が割れてしまいます。まして、何らか狙われてしまえば豪邸といえ安全を守ることは非常に難しくなります。その点、戸数が少なくても集合住宅となれば、ぐっと特定されにくくなりますからね。超豪邸に劣らぬスペックの集合住宅を求める超富裕層は増えることさえあれ減ることはないように思います。

ひとつ良い例があります。イギリスは階級社会ですからかけ離れた富裕層が多いわけですし、貴族は広大な領地に館をもっているわけですが、ロンドンでの住まいはあくまで集合住宅というか、壁を両隣家と共有するタウンハウスということで庶民と変わらないスタイルなんですよね。でも、天井高とか外装など圧倒的にスケールと質が高くなるという。
要は都市生活においては、お城よりアパートメント方式の方が便利ということだと思います。
(そんな英国のライフスタイルのリアルを知れる無茶苦茶、キレイで面白い本です。)
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二つ目は、
日本の「田園都市」計画は、単なるドーナツ化現象だけを引き起こし中途半端に密集した住宅地となってしまい、ただ都心から遠くて緑もそれほど多くない住宅地として失敗したということかと思います。
この論点には、相続でお屋敷町の大きな土地が細分化されやすい日本の特性も影響しているように思います。
要は、気づけば都心の方がよっぽど緑や公園も多く渋滞も少ない快適な環境だったというオチです。

67億円のマンション。
そんな、色々を考えさせられるトピックスだなあと思いました。


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