「モノ言う」スポンサー企業の時代がくる

すったもんだの末に結局、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏。
その後も批判の声が多いように感じますが、一定の擁護論もあります。擁護論の視点は、「冗談で言った話を何もそこまで」「全体を見れば女性蔑視発言とは言えない、切り取りだ」「功績を斟酌せず一方的過ぎる」などでしょうか。私自身、最近のなんでもかんでも「正義の仮面」でハラスメントだと火あぶり・血祭にあげる風潮を良いことだと思っていませんし、「何もそこまで」という意見に共感する部分があります。
平成総括:コンプラ至上主義が日本企業の活力を奪った
昭和の終わりとともに日本経済は、ジャパンアズナンバーワンとまで言われた絶頂から、失われた30年、長期停滞の平成時代を過ごした。景気循環だけを見れば、アベノミクスは戦後最長の好況をもたらしている体だが、所詮はドーピングめいた後ろめたさが付きま
しかしながら、今回の件はオリンピックであるがゆえに、やはり世界の常識という視点で判断せざるを得ない。とも思います。
やはり欧米人の文化は自由や人権を自ら血を流しながら獲得してきた歴史です。明治維新、太平洋戦争敗戦の歴史の屈折点である種成り行き的に欧米で確立した思想やコンセプト、さらには法体系、議会制度などを輸入して手早く近代化した日本とは、やはり土台根性が違う部分があります。
彼らが、正しいと考え”かくあるべき”と考えたことに対してとる行動は非常に強硬です。もちろんそんな中には明らかに一方的だったり、偏ったものも多いでしょうが、そんな”わきまえず””絶対ひかない”精神が、自由と民主主義の社会を獲得する原動力となったことも歴史的事実と思います。
そんな欧米人、世界の知識人を相手にしたときに、今回の発言はとても耐えられるものでないわけですから、辞任は妥当な判断だと思います。
日本のIWC脱退から見える、反捕鯨国とのバカの壁
12月25日、日本が国際捕鯨委員会を脱退した。「IWCはもはやクジラ愛好家の集まりになっている」(外務省幹部、12月30日 産経新聞)との認識もあり、今後も科学的客観的な議論ももはや期待できないとの判断から、十分な検討や各国への根回しをした

そんな中で、今回五輪最大スポンサーのトヨタが、率先して声明を出し、事実上森氏退任を迫ったたことが注目されまています。

この会見で長田准執行役員は、「(森会長の発言は)トヨタが大切にしてきた価値観とは異なっており誠に遺憾」との豊田章男社長のコメントを読み上げた。

トヨタはワールドワイドスポンサー(TOPパートナー)という、オリンピックの最上位のスポンサーとなっている。TOPパートナーは現在、世界で14社。日本企業としては他にパナソニックとブリヂストンの2社、そのほかではコカ・コーラやGEなど世界的企業ばかりが名を連ねている。

TOPパートナーは全世界で五輪マークを使ったCMやキャンペーンを展開する権利を持つが、それだけに契約するには300億円以上が必要だと言われている。なかでもトヨタは、2018年の平昌冬季五輪から自動車会社として初のTOPパートナー契約を結んだが、そのスポンサー料はTOPパートナーの中でもダントツで、1000億円を大きく超えたとも言われている。

豊田社長のコメントは、IOCにとって最大のスポンサーの発言なだけに大きな意味を持つ。その前日にIOCの態度が急変したのも、トヨタを筆頭としたスポンサー企業の意向を受けたためと考えるとわかりやすい。
森氏辞任を後押しした経済界 五輪スポンサー企業の”影響力”とは
 女性蔑視発言で東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏。最終的に同氏の辞任を後押ししたのは、菅首相でも小池都知事でもなく、企業イメージの悪化すら恐れたスポンサ…
実は一般的に、多額の広告費を恒常的に支出しているスポンサー企業は、テレビ番組だとか協賛しているスポーツイベントにガンガン要望を言い、影響力を及ぼしているだろうと思われてるようなのですが、まったく違います。
私は実務の現場で、メディアやコンテンツとクライアント企業の仲介をしてきたわけですが、メディアやコンテンツ側にモノ申した企業を一社も知りません。
【アゴラ掲載】コロナインフォデミックの戦犯たち③ 不可解な動機 メディアの亡国、罪と罰(2)
コロナインフォデミックの戦犯たち第3回ということで、今回はなぜあそこまでテレビ朝のワイドショーのコロナ恐怖訴求が過熱化したのかという動機に焦点を当てて記事にしました。 よろしければ、下記第1回、第2回もあわせてお読みください。 ...

従来のメディアやスポーツコンテンツとスポンサー企業の関係で言えば、「カネは出すけれど、口は出さない」。
まさにこんな状況がほとんどでした。
その理由は、単純ではなく複合的なものではあるのですが、表側の理由としては、「高度なクリエイティビティやオリジナリティが実現されるべきテレビ番組やスポーツイベントに対しては、あくまで現場の制作者や表現者、プレイヤーの裁量、編集権の独立性を認めて、スポンサーは中立的であろう」という企業側の抑制的な態度、判断があります。
一方でもう少し本音的な理由としては、メディアやスポーツコンテンツという独自の強いポジションをもった世界とは友好外交で徹したいという理由です。やはり世の中広くあまねくで商売をしている企業にとって、とるべき基本スタンスは誰に対しても善良な存在であることの他ありません。その点で、発信力があったり特定のファンがいるコンテンツとケンカができないのです。

でも、この点でもやはり時代は変わりつつありますね。企業自体がオウンドメディアなどで生活者と直接つながり始めた時代。企業も一メディアやコンテンツ側にばかり配慮してもいられませんし、その必要もなくなりつつあります。
一部のメディア企業だけが発信を独占してきた、情報の非対称性はこの点でも崩れつつあるわけです。

トヨタは”トヨタイイムズ”をネット広告などでも配信していて、オウンドメディア構築にも熱心な印象ですし、実際に自動車会社ホームページのサイトパワーはもはや下手なメディア以上の部分があります。

(写真:トヨタホームページより)

そんなスポンサーが文字通り、「モノ言う存在」になる時代の予感を感じさせる顛末だったように思います。

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