あえて言う「電通 社員230人の個人事業主化施策」は良策だ

電通の社員230人の個人事業主化施策が発表されてしばらくたちました。

新制度の適用者は、営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集した。適用者は早期退職したうえで、電通が11月に設立する新会社と業務委託契約を結ぶ。契約期間は10年間。電通時代の給与を基にした固定報酬のほか、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティブも支払われる。
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ネット上では思いのほか否定的な意見が多いように見受けられます。
まず単なるリストラ策だと言う意見。インフルエンサーの方も。

よくもま、有る種のリストラをここまで前向きに表現できる!と、感動しました。
https://twitter.com/tabbata/status/1326688952326057984?s=20

さすがの電通もコロナや産業構造の変化もありかなり厳しい業績ですから、もちろん人員規模の適正化を考えていないわけではないでしょう。
実際に最近は電通を早期退職した人に良く出会います。デフォルトある年齢で一定以上の役職にいなければ早期退職というようなイメージでしょうか。それだけ早期退職の条件も良い。
リストラだけならば、好条件の早期退職制度だけで十分なように思います。

(写真:AC)

私自身、広告会社を独立のため退職しましたが、独立の決断する上で何が難しいって、素晴らしい会社を辞められないんですよね。
独立して自分の事業をチャレンジしたいけれど、自由でやりがいもあって、社風も闊達で社会的にも評価され好待遇と何拍子もそろった会社を辞められない。でも人生は一度だ、素晴らしい大組織での仕事も経験したが、自分の裸のチャレンジもしてみたい。
贅沢な悩みなのですが、贅沢な悩みこそ答えがない分深刻だったりします。私の場合何年もそのジレンマに苦しみました。

だったら、会社に勤めながら副業をやればいいじゃないかと言われそうですが、大手の広告代理店はどこでもかなり副業に対して繊細です。
まず第一にクライアントの情報についての守秘義務がかなり重たくあります。私も今でこそ独立して、野良サイトを立ち上げたり、外部メディア(SankeiBizさんやアゴラさん)に原稿を書かせていただいておりますが、会社所属時代はSNSに触れることさえありませんでした。
第二に利益相反の問題です。大手代理店であれば一人で何億円、何十億円の発注権限を持ったりします、先日博報堂DYMで残念な事件がありましたが、万一にも疑念をもたれないためにも個人事業や法人経営を並走させることはかなり難しいと言わざるを得ません。
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一方で、広告代理店は仕事の性質柄もあるでしょうか、結構野心家というか、事業家的な気質の人間も多く入社しています。

やはり世の中二つの種類の人間がいますよね。

会社という組織が仕事をする上で不可欠な人。会社という組織でこそ水を得た魚だけれども、ピンでは正直どうして良いか分からないしそもそもプライドを持てなくなってしまう。良くも悪くも会社にはこういうタイプの方が圧倒的に多いですね。
こういう方に個人事業主になってくれというのは酷ですし何の成果もお互い生まないに違いありません。

でも私がそうでしたが、反対に最初のキャリアとしては就職を選び実際に良い縁があった大好きな会社で思う存分頑張らせてもらったけれど、いつかは自分の事業で勝負したい。たとえ会社規模がサラリーマン時代の1000分の1になっても自分自身の会社で動いてみたいという人間がいるのも事実ですし、広告代理店には相当数生息していることは間違いありません。

少なくとも、今回電通の施策はそんなタイプの人間にとっては超朗報ですし、230人という規模も「まあそれぐらいはいるよね」という丁度良い規模感ではないでしょうか。
自分の業界のことを言うのは手前味噌ですが、やはり広告業界にはモチベーションがなぜか無茶苦茶高くて頑張れるヤツ多いですよ。
そんな人間が230人。しかも裸一貫でなく、電通との10年の関係を土台にしながら動けば相当な成功例も出てくるように思います。

自分が独立してすごく分かりますが、会社も最高でした。やはり成果がでやすい。
でも独立しているがゆえにできることや、ならではの動き方はすごく多いと確信していますし、何よりこれはこれで無茶楽しいです。

あ、あとサラリーマンでない絶対的メリットは定年がないこと。
まだ動けるうちから独立して仕込んでいけば、結果より長く充実した時間を送れるというのも、私自身決断の大きな理由でしたが、この点だけみてもまさに図に当たったのではないかと予感しています。

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