業界OBとしても不可解過ぎる、博報堂MP社員の現金だまし取り事件

各メディアで報道されている博報堂メディアパートナーズ社員の現金だまし取り事件。
広告代理店OBの私としては、ちょっと信じられない気持ちでいっぱいですし、残念ですね。

手口は、プロダクションに発注した金額からキックバックを受けるというあまりにも分かりやすい内容のようです。
確かに広告代理店の働き方は、かつて”個人商店の集合体”と言われるほど個人の裁量が大きかったですし、それが醍醐味でもあったわけです。
新人でも制作業務を担当すれば1年で何億円も発注権限を持ったりしました。もちろん上司はいますが、基本的には性善説の信頼関係をベースにした付き合いの文化ですしそれが裏切られる事例をほとんど聞いたことがありません。

少なくとも私が在籍した頃には、そんなことが起きる雰囲気さえ一切感じませんでしたね。
ある意味、典型的に懸念される不正だけに、逆にあり得ないというのでしょうか、文化として少しもそんなことを考える余地がない感じがありました。何せ個では動きますが、朝から晩までコミュニケーションの密な業界でもありますから、変なことがあればすぐ周囲が気付くはずです。

それにしても、確かに大金を動かしているのに、なんで誰もそんなことを1mmも考えずプロダクションさんと付き合ってただろうと、今振り返ると多分二つの視点が大きいですね。

何より、社員の立場の重さの方が、不正で得られる利益よりはるかに大きいからだと思います。やはり社員を大事にする広告代理店の企業文化を考えれば、不正をして得られる利益と発覚して失うモノのリスクがまったく釣り合いません。
私は、独立の志で円満退社しましたが、私が在籍していた社を含め広告代理店は職場として理想的だったと、今でも感謝しかありません。
これほど個を大事にしてくれて、処遇面でも手厚くしてくれる業界はそうないように思いますね。それをあえて失ってまで不正に手を出す心理はちょっと想定がし難い最大の部分です。

もちろん会社へのロイヤリティもほとんどの社員が無茶苦茶に高いですよ。
私のように外へ出ることを決断した人間からすると、会社がすべてにして至高の価値でどうするよと皮肉を言いたくなるぐらいです(笑)。


Sammy-WilliamsによるPixabayからの画像

もう一つは外部の方にはあまり見えにくいかもしれませんが、制作会社さんにとっても、一社員に不正な便宜を図って得られる見返りよりも、大手広告代理店との取引口座の方がはるかに大事だろうからです。結局社員は異動もしますしね。
大手広告代理店と制作会社の関係は、高級寿司店と仲卸のような関係で、間違いなく大手代理店は最上客で、高いお金を払ってでも毎日最上のネタをしかも大量に買ってくれます。私も社外に出てあらためてしみじみ感じましたが、市場流通の一般品とは一桁値段の違う場合もあるぐらいで、その分間違いなく最高のモノが要求されますし、提供されるわけです。

そういう私のかつての常識からするとあり得ない不祥事で、残念としか言いようがありませんね。
事件が起きたのがメディア部門の会社で、通常多くの制作業務を担当するクライアント部門の事業会社と別なことも背景にあるのでしょうか。

何にせよ、ちょっと理解しがたいとしか言いようがありませんが、かつて大らかにして闊達だった産業界のサンクチュアリとも呼べる仕事文化が
それでなくても各社上場してそうもいかなくなりつつあった中、こんな不心得者の悪事でいよいよ終わる他ないと思うと残念ではあります。
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