かつて物理スイッチ時代の安全思想も大事では – 池袋プリウス暴走事故を考える

この事故自体、小さい女の子とそのお母さんが犠牲になるなど、なんともやり切れないものでありましたし、東京で自動車を普段から乗っているものならば必ずよく利用する道路での出来事だけに、他人ごととも思えず強烈な衝撃がありました。
そういう意味では軽々に事件の責任について語る気にはならないので、そこは司法の場での解決を見守るしかないと思います。

ましてクルマに異常があったかどうかは、まったく分かりませんし、そんなことがあったとしたら大変なことだと思いますので、そう簡単に異常というレベルの故障があったとも思えません。

そういう意味では異常がない前提ではあるのですが、最近の自動車の「運転のしやすさ」についてどうしても引っ掛かる部分があります。
この事故を起こしたトヨタのプリウス。ベストセラー車でもあり街中にすごく台数も多いですね。

私自身、結構乗ったことがあるのですが、とにかく運転感覚が軽快。あまり力を使わずに操作できることは良いのですが、
ハイブリッドならではのモーター駆動時のエンジン音がない静かさを含めて、クルマからのフィードバックが少なすぎるように感じいつもちょっと怖いなとは感じてしまいます。

(写真:AC)

特に、一番感じるのがシフトギアが完全に電子スイッチで、マウスのような軽いクリック感は良いのですが、今どのギアに入っているかは液晶ディスプレイをみない限りまったく分かりません。
正直、誤操作してしまうのではないかヒヤヒヤしてしまいます。
ステアリングのフィールも同様に軽く、手ごたえがあるとは言えません。
さすがプリウスでパワーもトルクも十分ですから、ちょっとアクセスをふむだけでスピードも結構出ます。
高速道路などでは爆走をするプリウスを良く見かけます。もちろんベストセラー車で台数が多いこともあるのですが、やはり性能が高い分出そうと思えばスピードが出るのだなとは思います。

自動車に限らず、飛行機などもかつては操縦桿とギアやワイアが物理的に繋がっていたものが、ある時代から”フライバイワイア”というかたちで、人間の操作が一度電気信号に置き替えられて機械を動かしていく方式に更新されていきました。
つまり、今やパソコンをいじくれば操縦ができてしまいますし、コックピットにも人間のイメージが出やすいように昔ながらの足でふむペダルなどの形状はありますが、実際にその操作はパソコンのマウス操作と変わりません。現にエアバスの飛行機は操縦桿がなくジョイスティックでの操縦方式です。

そんなフライバイワイアの思想は、自動車にも年々取り入れられつつあり、最近では新型のメルセデスベンツSクラスの巨大なタッチディスプレイには度肝を抜かれました。
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確かに、今後の自動運転を見据えれば、人間が操作しなければならない物理スイッチをどんどんなくしてコンピューター制御でクルマがすべて動く方が都合が良いわけです。
でも、かつて物理スイッチに相当な思い入れを持っていたメルセデスベンツの趣旨替えだけにインパクトがありました。歴史的には、メルセデスどの車種に乗っても同じ位置に同じデザインで設置されているライトのオンオフやモード切り替えスイッチなどはカチッカチッと、いかにも節度感ある感触でいかにもメルセデスという印象でしたし、手袋をしていても操作できる大きくてしっかりしたものでした。
オートマチックトランスミッションのギアもあえてギザギザのパターンになっていて、一気に意図していないギアに入ることを防いでいました。
そんなメルセデスベンツでさえ、自動運転時代を見据えて”フライバイワイア”的なインターフェースになりつつあるわけです。

そんな時代だからある程度は仕方がないわけですが、例えばJRなど鉄道会社や電力会社などのクリティカルに安全性が重視される設備では、あえての物理スイッチをいまだに残しているとの話を聞いたことがあります。例えば家庭用のブレーカーなどもそうですが、安全側は下側。要はなんかのはずみで触ってしまっても、オフからオンには行きにくいようになっているわけです。

Bruno /GermanyによるPixabayからの画像

例えば、池袋暴走事故についても自動車が昔ながらのミッション型のギアボックスのクルマであれば、はるかにあんな事故は起きにくかったようには思います。
一方で、自動車の安全性の進化もあって少なくとも日本における交通事故はピーク時1万5千人の5分の1、3千人台まで落ちているけですから基本自動車は安全に安全に進化しているとは思っています。

しかしながらの、やはりなんでも軽快なクリック一発的な運転感覚はちょっと怖いのも確かです。日本の優秀な自動車会社にはぜひ未来志向の自動車開発と同時に、人間が誤操作しにくい、誤操作に気づきやすい自動車のあり方にもこだわってもらいたいものだと切に思います。

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