日テレ ネット同時配信が苦肉の判断に違いない理由

日テレ系のキー局、準キー局が、10月からTVer経由で番組のネット同時配信の実験を3か月実施するとのことです。

これはなかなかの苦肉に判断だと思われます。

振り返ると、ネット経由でテレビと遜色なく動画を楽しめるようになったのはここ10年ではないでしょうか。
特に、まさにここ5年で急激に長尺ものでも画質的にも何のストレスもなくネット動画を楽しめるようになったと思います。
つまり振り返ればこの変化、本当に短い時間軸で起きたことなんですよね。

いざネット経由での動画コンテンツ視聴に慣れてしまうと、地上波やBS局のアドバンテージが恐ろしいほどないことに愕然としてしまいます。

1.ハード面
地上波もBS放送もかつては動画コンテンツを届ける実際的に唯一の方法だった”電波”に依存する分、もはやアンテナの設置が面倒くさいのではないでしょうか。
パソコンに電波を受信するアンテナを外付けする人はほとんどいないでしょうし、スマホでさえワンセグを受信しようと思えば小さなヘッドホンコード上のアンテナが必要で、普段からワイアレスヘッドホンしか使わない私などは正直使ったことがありません。ましてリビングルームのテレビディスプレイでさえ今はアンテナと繋がっているから地上波やBSを多少見ますが、FireTVなどのネット動画コンテンツプラットフォームも繋いでしまったが最後、NetflixやAmazonPrimeなどネット動画ばかり見てしまいます。
私が、今新たにテレビディスプレイを購入してもFireTvがあれば、もはや新たにアンテナを設置したり、チューナー機能を購入したりする気はありません。
実際に、最近数万円で安く設置できるようになったことで地味に人気な、寝室などに設置するプロジェクターも基本はネット経由での動画コンテンツを提供しています。もはやそれで十分なのです。

もちろん、私の両親など、どんなにネット動画のプラットフォームを教えてあげても、長年刷り込まれたリモコンでチャンネル選びの地上波、せいぜいBSの番組視聴から離れようとしませんから、高齢者はどこまで行ってもテレビ局さんのお客様で人生をまっとうすることになりそうですが。

2.ソフト面
となると、どんどんテレビ局さんの番組は高齢者向けだったり、高齢でなくても、ちょっとネットリテラシーが厳しい方々が見るコンテンツばかりになってしまいます。
そもそも、広域にいきわたる電波という今までは”誰もが見られる。誰もが見る。”という今までは、まさにテレビメディアの強みだった特性が、ネット動画コンテンツがいざ立ち上がってしまうと、どの番組も自分の興味の真ん中でない、なんとも中途半端、曖昧なコンテンツに感じられてしまう部分もまたリアルな実感です。
私自身、最近ではYouTubeやNetflixばかり見てしまいます。

例えば、私の好きなゴルフひとつとっても、地上波の中継は放送時間も限られますし、ネット中継の方がチャンネルを複数開設して注目選手に密着したり、全試合時間中継したり、放送枠の縛りのない部分存分にファンを楽しませてくれるポテンシャルを感じさせてくれます。
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もちろんテレビ局自身がそんな課題は百も承知ですから、今回のネット配信の実験となったわけです。

(日本テレビ本社:写真AC)
でも厳しいのは、電波免許の大きな囲いがあった今までと違って、ネットの世界はユーチューバーからNetflixや今後はディズニーなどのグローバルメガプレイヤーと平場でガチンコの戦いをすることになるわけで、本音としては自分たちのアドバンテージが生かせないそんな土俵には関わりたくないというのが本音だと思います。
というか、それが本音だからこそ今まで動画コンテンツを取り巻く環境がこうなることは10年も20年も前から言われていながら、なかなかネットに前向きになれなかったわけです。

もちろん、先ほど触れたように我々の親世代もまだまだいますから、あと10年20年はなんとか今までの放送モデルでもなんとか生き延びれることでしょうが、それではあまりも未来戦略がないよねというところまできてしまったということかと思います。

なかなか難しい話ですよね。ホリエモンなどはフジテレビ買収騒動の頃から放送とネットの融合を提言してきたわけですし、テレ朝とサイバーエージェント共同で運営しているAbemaTVなどのチャレンジも現にあるわけですが、
あまりにも今までの地上波ビジネスが恵まれた環境(放送免許と他競合の動画コンテンツが存在しなかった)にあったために、「分かっちゃいるけどやめられない」状態だったわけです。

さすがのテレビ局も、今までのような圧倒的優位な地位を今後も維持することは厳しいですよね。でも制作能力のアドバンテージは圧倒的ですから、ネット社会でも一定の立場は築き得るのではないでしょうか。
実際に映画全盛の時代からテレビの時代になっても、映画会社はテレビというプラットフォームの内部に入り込んで制作者として活躍するなど生き残りましたよね。それも一つのネット時代にテレビ局が生き残るモデルではないかと思いますが、ここまで急速にネット動画コンテンツの時代が立ち上がるとさすがの強力なテレビ局もウカウカしていると、本当に跡形もなくなりかねないのではないでしょうか。

そんな時代の変化の速さと、そんな変化に背中を押された苦肉のネット同時配信実験のニュースでした。

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