「君はいつも間違える」

「お前はもう死んでいる」級に端的にして怖い言葉です。

このワード、日本でも大ヒット中の韓流ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」でカタキ役の韓国最大の飲食業企業「長家(チャンガ)」の圧倒的権力者にして会長、チャン・デヒが自分を失脚させようとして失敗した部下のライバルである専務に言い放った言葉です。

(写真:梨泰院クラスTwitter)

本「たんさんタワー」で【子供と見ても安心 – ラブ💛韓流ドラマ】を書いてくれている友人のマシュマロさんに薦められて少し韓流ドラマを見るようになり、なぜ韓流ドラマに人気があるかと言えば確かに一言で言えないほどあるなと気づいたのですが、少なくともその理由の一つがこんな10文字足らずにもかかわらずドーン!とくるパワーワード散りばめられた脚本力にあるように思います。
【子供と見ても安心 - ラブ💛韓流ドラマ】第15回 梨泰院(イテウォン)クラス
梨泰院(イテウォン)、ソウル市内の一地区だそうです。ドラマでみる梨泰院という場所は、飲食店が多く、日本の渋谷とか六本木あたりの雰囲気なのかなと思いました。 もしかしたらハロウィンの時期に仮装した人がひしめくシーンを観たから渋谷、六本木...

何十年に渡る愛憎時間軸の中で発酵し澱(オリ)のように沈殿した感情の重さを体現する一言がドラマにパンチを生んでいきます。
日本のドラマで似ているものと言えば、やはり近いものと言えば半沢直樹ですかね。
「失敗しやがったなざまあみろ」でも「お前にオレは倒せない」でもなく、「君はいつも間違える」という言葉で、全人格、全人生を一刀両断してかかるという。カタキ役はこれぐらい憎たらしくなければ務まりません。

ところでなんでこんな言葉を思い出したかと言うと、久々に自民党総裁選でドロドロとした権力闘争の断片が垣間見る思いがするからです。やはり国会議員の世界は、一度「間違え」てしまえば、党の公認をもらえないとか対立候補を立てられるとか、そこまでミエミエでなくてもそっと邪魔されるとか、国会議員の身分さえ保証されていない世界です。実際に世の中には元国会議員の方がたくさんいらっしゃいます。しかもその立場を守ったり獲たときの権力も大きいですから、それはもう修羅場になって当たり前です。逮捕された河井夫妻の物語なんて、思いっきりドラマを超える世界観で笑ってしまいます。

岸田さんは今回どこか”間違え”たんでしょうね。きっと。最有力候補だったはずが、凧糸の切れた凧のようで可哀想でさえあります。やはりエリート議員だけに忖度し切らない性分があるように思います。
石破さんは、あまり”間違え”を気にしないで我が道を行くタイプなんでしょうね。きっと。逆に言えば安倍首相の周囲から見れば「石破は常に間違える」という評価に違いありません。
やはりその点で言えば菅さんの「オレは何か間違いをしでかしていないだろうか」と常に慎重な方が出世という意味では有利に違いありませんね。特に身近に安倍氏や麻生氏、二階氏のような大物がウロウロしている場合は、やはり彼らの不興を買わないことが絶対的必要条件ではあります。まさにちょっと悲しい現実ですが忖度の極みですよね。

この「間違わない」「不興を買わない」というなんとも抽象的な処世術、別に政治の世界だけでなくビジネスの世界でも結構当たり前だったりします。その辺はまさに半沢直樹に描かれている通りです。

なんでそんな戦国時代のようなある意味前近代的な感情が、権力、出世の世界にまかり通っているのかはなかなか一言で言い表せませんが、ひとつ思うのは権力の座につく人は、まさに今回の菅さんが典型的ですが、人の何倍も上司の感情や考え、こだわりの機微を敏感に感じる力があり、しかもそれに万全の配慮、対応をするマメさがありますから、ほとんどの人がその次元から言えばまったくの落第点ということがあるのかなと思います。要はトップの人から見れば、圧倒的に自分基準で見れば気が利かない部下にいつも取り囲まれていて、正直いつもムカついたりイライラしていると思うんですよね。そんな中で権力者の本音で言えば「まあまあ許せる」部下がいれば「まあしょうがないか」となるという。

そんな空気を思いっきり見せてくれる自民党の権力争い。
忖度の時代がまだまだ終わらないことだけは間違いないように思う今日この頃です。

記事の更新情報をお届けしています。ぜひフォーローください。

秋月涼佑のtwitter

facebookはこちらから。

タイトルとURLをコピーしました