【第21回】衝撃の書「ホモデウスを読む」 – 新型コロナウイルスは誰かのせい?

新型コロナウイルスの拡大が収束の兆しを見せません。
とはいえ現代の医学はSARSもエボラ出血熱もなんとか対策してきたわけですから、期待としては遠からず収束するだろう。して欲しいというものです。その観点では「やり過ぎ。大げさすぎ」というホリエモンの発言ももっともです。
(ホリエモンは都内最大級のゴルフ練習場ロッテ葛西ゴルフが2週間休業しているのに出くわし「えっ?」となってTwitterで呟いたようですが、私も閉鎖になる直前に行って数時間過ごしていたので、気持ちは分かります)

一方で、突然変異ウイルスはやっかいなことに、エバンゲリオンの使徒のごとく毎回性質が違っているがゆえに今回のウイルスも医学的に対策可能と断定することは現時点で誰もできないのも厳然たる事実のようです。
その辺の科学的、客観的論点は硬派ドキュメンタリーとして本「たんさんタワー」でも取り上げさせていただいた、優秀な下記Netflixオリジナル「パンデミック」にかなり詳しく説明されています。
【第4回 Netflixがすごい】オリジナルドキュメンタリー「パンデミック」中国からのウイルス流行をズバリ予言。今起きているウイルス流行の怖さすべてが理解できる。
中国で発生したコロナウイルスの流行大変なことになってきましたね。 医療技術も進歩していて清潔で知られる日本です、公衆衛生の面で普段深刻な危機感を持つことはそうないように思いますが、インバウンドの飛躍的拡大も含め国と国とを人が行き交う時代で...

このドキュメンタリーなどを見れば、可能性は低いだろうけれども悪い方の目が出てしまうと破局的な事態に至る、いわゆるブラックスワンに備えることにも一理あります。
【新型コロナウイルス】「不確実なときはパニックせよ」リスクの専門家“知の巨人”が緊急提言 | 『ブラック・スワン』のナシーム・ニコラス・タレブが語る
リーマン・ショックを予見した元トレーダーのナシーム・ニコラス・タレブが新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、仏誌「ル・ポワン」の独占インタビューに答えた。ホワイトハウスに対して、過去14日間に中国での滞在歴がある人への検疫実施を推奨したというタレブは何を語るのか。ナシーム・ニコラス・タレブを数行で紹介するのは至難の業…

それにしても今回の事態は「ホモデウス」で論じられてきた「文明論的」な視点でとらえるべき状況としみじみ感じています。普段は本連載「ホモデウス」のページ順に従っているのですが、ここは新型コロナウイルス特集ということで、「ホモデウス」的な現代文明論の視点で新型コロナウイルスについて考えてみたいと思います。

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現代人ならではの「死生観」が誰か悪者を求める

現代の科学と文化は、生と死を完全に違うかたちで捉える。両者は死を超自然的な神秘とは考えず、死が生の意味の源泉であると見なすことは断じてない。現代人にとって死は、私たちが解決でき、また、解決するべき技術的な問題なのだ。
(中略)
ところが現実には、人間が死ぬのは黒マントの人物に肩を叩かれたから、あるいは神がそう定めたから、はたまたそれが何らかの宇宙の構想の不可欠な部分だからではない。人間はいつも、何らかの技術的な不具合のせいで死ぬ。たとえば、心臓が血液を押し出すのをやめる。それでは、これらの技術的な問題は何が引き起こすのか?他の技術的な問題だ。心臓の筋肉に酸素が十分に到達しないために、心臓は血液を押し出すのやめる。遺伝子が偶然、変異を起こし、遺伝の指令を書き換えたから、癌が拡がる。誰かが地下鉄でくしゃみをしたから、私の肺に病原菌が巣くう。超自然的なところは少しもない。万事、技術的な問題なのだ。
そして、どの技術的問題にも技術的な解決策がある。だから、死を克服するためにはキリストの再臨を待つ必要はない。尋常ではない頭脳を持つ人が二、三人いれば、研究室で解決できる。伝統的に死は聖職者や神学者の得意分野だったが、今や技術者が彼らに取って代わりつつある。私たちは、癌細胞を化学療法やナノロボットで殺すことができる。抗生物質で肺の病原菌を根絶できる。心臓が血液を押し出さなくなったら、薬や電気ショックで動きを回復させられるし、それでも効き目がなければ、新しい心臓を移植することができる。たしかに現時点では、技術的な問題のすべてに解決策があるわけではないが、だからこそ私たちは、癌や病原菌、遺伝学、ナノテクノロジーの研究にこれほど多くの時間とお金を注ぎ込んでいるのだ。
科学の研究に携わっていない一般人さえも、死を技術的問題と考えるのが当たり前になっている。誰かが医院に行き、「先生、どこが悪いのでしょう?」と尋ねると、医師は、「ああインフルエンザです」とか、「結核です」「癌です」などと答える。だが医師は、「人はどのみち、何かで死ぬものです」などとはけっして言わない。だから私たちはみな、インフルエンザや結核や癌は技術的な問題であり、いつの日か、技術的な解決策が見つかるかもしれないという印象を持っている。
私たちは、ハリケーンや自動車事故や戦争で人が亡くなったときさえ、それは防ぎえた、そして防ぐべきだった技術上の失敗と見なす傾向にある。政府がもっと良い政策を採用してさえいたら、あるいは、地方自治体がきちんと責務を果たしてさえいたら、はたまた、軍の司令官がもっと賢明な決定を下してさえいたら、死は避けられただろう、と。死は、訴訟や調査にほとんど自動的につながる理由となった。「どうして彼らが死ぬなどということが起こりえたのか?どこかで誰かがしくじったに違いない」というわけだ。

そうまさに上記ホモデウスの引用部分が予言していた状況が今起きています。
安倍政権は支持率を大きく下げ、厚生省の官僚は対応のまずさを指弾されています。
中世にも疫病の蔓延は数え切れぬほどあったわけですが、栄養状態、衛生環境、医療すべての面でその影響は甚大であったでしょうが、スケープゴートは悪魔の手先となって疫病をばら撒く魔女に押し付けられたりしました。無実にもかかわらず魔女扱いされて生きたまま焼かれた人にはそれがはるか歴史のかなたの異国での出来事とは言え悄然としてしまいます。

自然災害と言いながら政府批判に熱心なモーニングショー

今朝のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」ではテレ朝の玉川氏が「今回の新型ウイルスは、自然災害のようなもの」と断じる一方で、政府や自治体の対応のまずさに対する舌鋒が鋭いです。まさにホモデウスが予言するように現代人の死生観は、自然災害級の不可知の病原菌による疾病や死に対しても、現代の科学や技術ももって防ぎ得ないわけがないという大前提で、その技術的失敗の原因や責任の所在の追求をせずにはおれないわけです。そういう意味では、テレビ番組的なカタルシスで言えば、政府や自治体を悪者扱いしてこき下ろしておけば視聴者の留飲は下げられるわけでしょう。

だがもしかすれば、単純に今回の新型コロナウイルスの性質が、現代の医学や技術で解決できないレベルのものであるだけかもしれません。

Chokniti KhongchumによるPixabayからの画像
この点、科学者や医者であればあるほど、人間の知性や技術が現実に及ばない領域がいまだあることに謙虚であるとは思います。確かに「有効な療法や薬もないのに検査をしてどうなるのか?」などと言われると穏やかではありませんが、現実には検査して陽性が分かったところで有効な医療はないわけですから、そんな陽性患者は病院にあふれれば、癌など他の入院患者もいるわけだから簡単に医療崩壊が起こるでしょう。すでにウイルス検査をする時に医療従事者が着用するよう定められているスペックのマスクも現場に枯渇し始めているようでもあります、実際には今この時点でも現代人が期待するような科学や医療が万能であるとの信仰は崩れています。

例えばダイアモンドプリンセス号でも処置一つとっても、ではよりマシだった隔離場所はどこだったのか?と言われれば、素晴らしい案を出せる人は限られるのではないでしょうか。

性質が分からない突然変異ウイルスは確かにやっかいなものですが、ある意味誰のせいでもなく不可抗力的な問題でもあって、せめて冷静に対処したいものだとは思います。

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