それは家具屋はどんどん潰れるのですが、インテリア小物は結構売れているように見受けられるということについてです。

ルームディフューザーを代表についつい買ってしまうオシャレ小物たち
先日東急ハンズをウロウロして思ったのですが、あらためてライフスタイル系のオシャレ商品のラインナップが増えましたよね。例えば、輸入モノの調理器具とか。ちょっと、キッチンに置いておくと素敵な印象を演出してくれるようなアイテム。ワインの栓とか、秤とか、絶対なければ困るというわけではないけれど、あったらちょっと便利かなと思い。何より、カッコイイので思わず買って帰ってしまう。
(写真コンランショップ)
こういう雑貨ってひと昔前の東京圏での生活なら、六本木のAXISや西新宿のコンランショップで買うイメージでしたが、結構取り扱うお店が増えたのかなという気がします。ショッピングモール型の大型小売に行くと、結構なお店がオシャレ雑貨を扱っています。例えばロン・ハーマンなんかもアパレル8割に雑貨2割という感じです。
特に人気なのがルーム・ディフューザー。香水のビンに香りを徐々に発散させる木を差すタイプもあれば、電気的に香りを発散させるタイプなどもあり香りの種類といいバラエティー豊かです。国内外メーカーも本当に色々。これも、なんかちょっと自宅のインテリアを楽しく素敵に演出してくれる気がしてついつい買ってしまうアイテムの代表です。
インテリア小物を買う行為は家具を買うことの代償行為
いやそれ自体は結構なことですし、私自身人一倍インテリア小物が大好きなのですが、やはり家具屋がバンバン潰れるのにインテリア小物がこんなにもてはやされる感じはなんでだろうと考えてしまいます。だって目的というかモチベーションは家具を買うのもインテリア小物を買うのも、快適な空間を実現して家族が気持ちよく過ごしたいとか友人を招いてもてなしたい。という共通のモチベーションではないですか。
そう考えると、インテリア小物を買う行為は家具を買うことの置き替えというか代償行為ではないかなという考えにどうしてもたどり着きます。そしてその背景もしくは理由には大きく2点あると思います。
理由1 普請文化の新築志向で住インフラがストックされないから
日本人が「穢れ(ケガレ)」とか「禊ぎ(ミソギ)」という独特の感性からも、欧米に比べて新築志向が強いことは多くの比較文化学者が指摘するところです。伊勢神宮が20年ごとにお宮を建て替える式年遷宮なんてその代表的なものですよね。ヨーロッパ石の文化と木の文化の違いもあろうかとは思いますが、法隆寺は奈良時代からビクともしないわけですから、やはり日本人にとって新築が何より気持ち良いということにつきると思います。
(写真:伊勢神宮公式HP)
私は京都での定宿を「ウエスティン都ホテル京都」にしてます。 (写真;ウエスティン都ホテル京都)
村野藤吾の名建築が東山に立地するあの風情が大好きなのですが、家族旅行の際「よーしここは奮発して、桂水園だ」と村野藤吾がこだわり抜いて設計した名和式建築の別棟に泊まったことがあるのですが、家族からは大ブーイングでした。彼らからすると、「桂水園」は「お化けが出そうな」「古く」「汚れた」木造の小屋に過ぎなかったわけです。余談でしたが、日本人の「穢れ」を嫌う感覚の強さを思い知ったものでした。
(そういえば、今ホテルのサイトを見ると「桂水園」の宿泊プラン自体がなくなっている!)
(写真;ウエスティン都ホテル京都)
日本人の新築志向は高温多湿、地震が多い国柄での木造家屋に対する非常に現実的な対処法であった部分もあろうかと思いますが良いこととしては、バンバン新築を建てますから建築家が名をあげられますよね。世界的に日本の建築家が活躍できる背景です。
そう考えると悪いことばかりではもちろんないのですが、やはりヨーロッパと比べて辛いところは住環境のインフラがストックされていかないところです。確かに100万円を超えるような本格家具は高い。でも家具文化ご本家のヨーロッパでは家屋も家具も少なくとも数世代使うことが前提なんですよね。それを前提にどんな小さな街でも家具をメンテナンスする工房がありますし、技術も確立しているわけです。一方普請文化の日本はどうですか?資産家のおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなって、それこそ先日の「サァラ麻布」で扱われるような家具が残されていても、そのうち粗大ゴミになってしまうのではないでしょうか日本では。メンテナンスしたくてもどこに頼めば良いか誰も知りません。確かにそうなってしまうと百万円を超える家具は本来の寿命を全然まっとうしませんから、高価過ぎる買い物と映ってしまうわけです。
理由2 誰も快適な住空間のゴールイメージを明確にはもっていないから
もう一点あげれば、誰も快適な住空間のゴールイメージを明確にはもっていないことがあげられるかと思います。何せ1883年鹿鳴館以来の西洋化ですからね。まだたかだか150年。太平洋戦争の焼け野原を挟んだりで、本当に西洋的空間の何たるかを肌で感じ始めたのは海外旅行が大衆化したここ30年程度のことではないでしょうか。それまでの世代は建築家やインテリアデザイナーにしてからが手探りで、なんとか和洋折衷の様式を発見しようと試行錯誤していたわけです。
最近では、新築マンションの間取りからも和室がほとんどなくなり、一気に和洋折衷の未練は捨てられたようにも感じます。それはそれで私個人は残念に感じますが、さっきの「桂水園」の一件を見れば明らなように、日本人の現実的な選択は洋風一択。多分あと100年もすれば本格的な和風建築など、博物館でしか見られないものになる気がします。
ここで困るのは、かといってどうしつらえれば、どういう家具を整えれば快適な西洋スタイルの空間になるか誰も一般レベルでは知らないということなんですよね。だってどこの家も自分の両親の世代までは和風の生活からなし崩しに西洋化した世代で、よっぽどハイカラな家以外は、ヨーロッパなど見たこともなかったわけですから、教えてくれる人もお手本もありはしません。
快適な空間をみんな実現したいのにどうして良いのか分からないのが実態と思います。
そう考えると大塚家具さんが今後再生していくには、本格家具を使った空間の魅力のけいもう啓蒙や具体的な道筋やイメージの提案量ではないかと思いますね。日本人は快適な空間を求めているし、納得すれば必ずお金を出すと思っています。
「大塚家具応援企画」他 秋月涼佑 建築・インテリア 記事一覧
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