【家族に障害児がいます from N.Y. 第3回】多動と場所見知り

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お友達シリーズの新しい仲間。
N.Y.在住のMrs.NYしおママの外国で障害児を育てる日々の貴重なレポートです。

多動

 息子の行動で一番最初に悩まされたのは彼の多動である。とにかくジッとしていない。大袈裟ではなく、本当に1秒たりともジッとしていないという感覚。小さい子のほとんどは落ち着きなくジッとしてないとは言うけれど、その範疇を超えてジッとしていないというのが最初に感じた違和感だった。
食事の際に椅子に座らせても、スルッと椅子から滑り降りてどこかへ走って行ってしまうし、着替えなどをさせている間も、日焼け止めなどを塗っている間も一時もジッとしない。常に体をあちこち動かしていないと落ち着かなかったのだろう。注意をしてもこちらの声に反応することはほとんど無かったように記憶している。
彼が2歳になる前に、私達一家は主人の仕事の関係でLAからNYに移り住むこととなった。その引っ越しによる6時間のフライトの間、彼は寝ている時間以外は通路をぐるぐると歩き回り、通路側でパソコンなどを利用している人のキーボードに手を出して触ろうとするので、それを後ろから止めに入るという行為を何度も繰り返したりしていた。多動に関する問題は今も続いているのだが、この頃から5歳くらいまでの間が一番大変だった記憶がある。言葉で制止出来ない彼の動きを止めるには、実際に手を捕まえたり体を抱き上げたりするしかなかった。それでも繋いでいる手をねじるように振りほどいて走り出す彼を毎回捕まえるのは、本当にしんどいものだった。
あの頃の私の小さい夢は、息子と手をつないでゆっくりと歩きながら周りの風景を見るというものだった。他の親子が手をつないで通り過ぎていく様子を心底羨ましく眺めたものだった。何気ない普通の行動を普通に出来ないジレンマはその後もずっと続くことになる。

場所見知り

 息子の幼少期の頃の問題行動の中で最も困ったことの一つに、彼の異常なほどの場所見知りがある。それは突然始まった。最初、NYに移り住んだばかりの頃はまだ大丈夫だったが、しばらく経った頃から突然、普段行ったことのない場所に入ろうとすると誰もがギョッとするようなもの凄い声量の叫び声で抵抗するようになった。これが本当に生活するうえでとても困ったことの一つになった。よく行くスーパーマーケットは大丈夫だけれど、時々行くスーパーマーケットはダメ。その叫び声は買い物の間中ずっと30分程度は余裕で続くのだ。
最初は理由が分からずこちらもパニックになったけれど、段々と慣れない場所でしかも暗い照明や暗い雰囲気の場所が最もいけないことに気付いた。なるべくそういう場所には連れて行かないようにしたが、どうしても行かなければいけない場所などに連れて行くときは本当に苦労した。公園ですら行ける公園と行けない公園が存在した。そのためほぼ毎日、自宅から歩いて30分ほど遠くの公園まで連れて行っていた。
でもこの公園までの30分の道のりは、息子の行動に振り回されず自分のことを考えられる貴重な時間になった為、私にとっては息子が寝ている時間以外で一番ほっとできる時間帯でもあった。息子がおとなしくしていてくれるのならば、歩いて30分だろうが1時間だろうが私は一向に構わなかった。むしろ時間が長くかかる方が有難いと思えるほどだったのだから今思い返しても泣けてくる。
場所見知りが始まるまでに連れて行った場所は比較的大丈夫だったけれど、それ以外の場所に関してはほぼ全滅と言っていいほどに泣き叫ばれる。建物に入る以前の段階で、そちらの方向にベビーカーを向けただけで体をのけ反らせるほどに全身を使って泣き叫び抵抗する。その声のボリュームと異常さが嫌に目立つので、周りにいる人達ほぼ全員がギョッとした表情でこちらを伺うことにも耐えられなかった。何か私たちがおかしなことをしているような気にさせられる。まぁ実際おかしなことにはなっているのだけれど、原因が分からなければ解決方法も思いつかないもの。
最初の頃は何でそんなに気が狂ったように息子が泣き叫ぶのか分からず途方に暮れた。この尋常でない場所見知りのせいで、一度予約した日本行きのフライトをキャンセルすることになったことがある。ちなみに母親の私が日本に帰れたのは息子が6か月の頃に一度だけでその後、息子の障害が判明してからは一度も帰国出来ていない。とても10時間以上のフライトに耐えられそうにないし、それ以外にも乗り越えなければならないハードルが高過ぎて私の勇気が出ないのが一番の原因ではあるが。

【家族に障害児がいます from N.Y.】記事一覧

第1回『障害者の家族になる』
第2回『喋らない息子』
第3回『多動と場所見知り』
第4回『こだわり』
第5回『感覚過敏』

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