【マウンティング・ミュージアムへようこそ 第1回 名刺交換】

人類・ホモサピエンスに一番近い類人猿は、チンパンジーとボノボとのことです。
ボノボは博愛主義者で平和愛好家とのことですが、チンパンジーは見た目の愛嬌と違って、超狂暴、群れ内の個体間に順位差がありポジション闘争が激しいとのことです。ゴリラなんかもそうですよね。
人類はどうもボノボ、チンパンジー両方の特性をハイブリッドに持っているとのことで。
がゆえに繁栄もしたとのことなのですね。
【第10回】衝撃の書「ホモデウスを読む」 - 我々のなかのサル
この新たな平和は、ただのヒッピーの幻想ではない。飽くことなく権力を追い求める政府も、強欲な企業も、やはりこの新たな平和を頼みとしている。メルセデス・ベンツが東ヨーロッパで販売戦略の構想を練るときには、ドイツがポーランドを征服する可能性は考慮...

さてそんな人間の出自がなせる業なのか。
我々の日常生活で地味に繰り返されるマウンティングの数々。

マウンティングとは、
サルがほかのサルの尻に乗り、交尾の姿勢をとること。霊長類に見られ、雌雄に関係なく行われる。動物社会における順序確認の行為で、一方は優位を誇示し他方は無抵抗を示して、攻撃を抑止したり社会的関係を調停したりする。馬乗り行為。 (大辞林第三版) マウンティング意味

人にやられると鬱陶しいことこの上ないマウンティングですが、
そこが悲しい人の性、自分もついつい繰り出している気がします。
人にされると「このチンパンジー野郎がぁ!」とムッとするのに、なぜか自分が上位に立てそうな相手には繰り出したくなるマウンティングという魔の習性。

そんな自戒の念も込めて、日々のマウンティング風景をちょっと切り出し紹介していきたいと思います。
所詮はしょうもない人の業を笑うも良し、せめて自分は類人猿から進化してマウンティングゼロ人間を目指すぞーも良し。だってどうせ人類700万年、あと700万年ぐらい修行しないとマウンティングの習性はなくならいでしょうから、せめて自分たちのリアルな姿だけでも確認してみようではありませんか。

さて初回につき前置きが長くなってしまいましたが。第1回は「名刺交換」の巻です。

名刺交換とは現代社会が確立した、お互いの社会的帰属確認の合理的な手段に他なりません。名前だけならば昔の戦場のように名を名乗ればよい。相手の所属する会社、立場を確認する、あるいは強者はその強い立場を有無を言わさず確認させる瞬間です。
我々は無意識に名刺を受け取った相手を自分より上位か、下位か?
その会社と自分の所属する会社の位置関係は?
相手が4人いれば、それぞれの序列。だれが意思決定権者なのか?
という自分を中心に描く三次元の位相空間に当てはめようとします。
社会人であれば、自分の名刺を見た瞬間に自分がやるように、相手もこちらの値踏みをすることを痛いほど理解しています。
それがゆえに、サラリーマンを代表とする組織人は、少しでも自分の名刺の価値を上げたいと考えます。
これは会社にしてみれば安い従業員コントロール法です。給料のように経費はかかりません。
もちろん肩書が上がれば給料も上がったりするでしょうが、例え給料が上がらなくてもサラリーマンは肩書という無形の処遇を欲します。それは常にマウンティング合戦が繰り広げられる戦場の現実を少しでも優位に過ごしたいという本音があるからに他なりません。

スタンフォード監獄実験という恐ろしい実験があります。
普通の大学生を集めて、看守役と囚人役を割り振り2週間もすると、元々なんの属性的な違いもなかった2つのグループが、きっちりとそれぞれの役割、行動を取るようになったというものです。

Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像
最後には、看守役が囚人役に素手で便所掃除をさせたり暴力を振るうようになり実験は中止となったそうです。
この実験は、社会的な役振りがひとたび行われると、強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいることで、次第に理性の歯止めが利かなくなり、強者は横暴に、弱者はより抑圧的、隷属的な方向に向かっていってしまう「権力への服従」の傾向を見せることです。
また実験前のパーソナリティーや個性、立場に関わらず上記のような傾向をみせる「非個人化」の傾向が顕著に見られたとのことです。
恐ろしいですね。
よく立場が「人を作る」などと良いことかのように言われますが、逆に言えば組織が人をうまく使うために、人間の特性を生かして自然発生的に編み出したあざとい手法と言えるかもしれません。

さて、そんなたかが名刺、されど名刺なのですが、実際の場面場面では結構面白い事象が発生します。

例えば、明らかに偉い人がせっかく名刺を渡しても、相手がまったく何の反応も見せなかったり理解がないと、結構オロオロしたり、イライラしだしたりして微笑ましいですね。特に地方のラウンジあたりでそんなことが起きようものなら、サル山の子分たちは、いかにその人がすごいかいらんト書きを滔々と語らねばならくなったります。

例えば、長い付き合いの人が、「な~んにも変わってないんですがちょっと組織変更がありまして」とわざわざ新しい名刺を渡してくれる、部長代理が部長に昇格した名刺を渡してくれるような瞬間。もちろん、受け取った方は敏感に気付いてあげるのがマナーです。

例えば、外資系企業などの、偉いんだか偉くないんだかよく分からない名刺も風情があります。特に世界では大きくても、日本では知られていない外資系企業などは転職してきてもらうために役職を盛る傾向があります。
日本企業では課長クラスでもなかった人が、いきなりバイスプレジデントの名刺を持ったりします。
ちなみに、外国企業のバイスプレジデントを副社長と訳すのは間違いで、せいぜい部長クラスの場合が多いように思います。
そんなことを言ったら、日本企業の。主査とか理事という、きっとラインの権限は大きくないけれども、名刺マウンティング合戦ではなんとなく最弱でもない名刺の風情も、伝統的日本企業ならではの温情主義の温もりを感じて、良いですね。

それにしても、名刺すなわち社会的役割を人生のプライド、充実として生きるのも一軸の明快さ、そして特に今までは社会の要請とも符合して生きやすくそれなりの生き方かと思いますが、
スタンフォード監獄実験ではないですが、所詮は相対的なサル山のポジション争いの側面にも往々なりやすく、特にこれからの時代、個人の活動領域もますます増えると思いますので、名刺マウンティングもほどほどにしたいものとは思います。

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