【第12回】衝撃の書「ホモデウスを読む」 – 手塚治虫「火の鳥」が描く「不死」

二一世紀には、人間は不死を目指して真剣に努力する見込みが高い。老齢や死との戦いは、飢饉や疾病との昔からの戦いを継続し、現代文化の至高の価値観、すなわち人命の重要性を明示するものにすぎない。私たちは人間の命こそこの世界でもっとも神聖なものであると事あるごとに教えられる。誰もがそう言う―学校の教師も、議会の政治家も、法廷の弁護士も、舞台の俳優も。第二次世界大戦後に国連で採択された世界人権宣言(これは今のところ世界憲法に最も近いものかもしれない)は、「生命に対する権利」が人類にとってもっとも根源的な価値であると、きっぱり言い切っている。死は明らかにこの権利を侵害するので、死は人道に対する犯罪であり、私たちは総力をあげてそれと戦うべきなのだ。
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皆さんは、手塚治虫氏の「火の鳥」を読んだことがあるでしょうか。マンガが娯楽と考えられていた時代。実際に手塚治虫氏自身がエンターテイメント性の高い作品をたくさん書いたわけですが、「火の鳥」はまったく別格の作品です。
火の鳥 手塚治虫文庫全集

あえて言えば文明論という言葉が一番ぴったりくるでしょうか。哲学、宗教論の要素ももちろんある。阪大医学部卒業で医師の資格を持っていた手塚氏の、思索の深さ、マンガと言う表現にかける志の高さ。もちろん素晴らしいエンターテイメント作品に仕上がっていますが、「火の鳥」ほど、その壮大な時間軸と視座をもって描かれている作品を他の多くの文学や論考の書の中に私は知りません。正直一番近い作品が、ハラリ氏の「サピエンス全史」であり「ホモデウス」だと感じます。
もちろん高く評価されていたことは間違いないのですが、あまりに志が高い作品であるせいでしょうか、マンガというジャンルの中でどう扱って良いかわかりにくいためもあるのでしょう。まして手塚氏が亡くなったこともあって、最近ではあまり読まれている感じがしません。
「ホモデウス」に興味をもち、内容に印象をもった人ならば絶対に読むべきだと思います。なぜなら、天才手塚治虫はハラリ氏の言う「人間は不死を目指して真剣に努力する見込み」をすでに人間の本性として見定めていて、まさに「不死を目指した」人間がどうなるかをこのマンガですでに描いているからです。


<写真文庫版表紙>
「火の鳥」は大著でもあり、ネタバレなどありえないのですが、ここ以降には「火の鳥」で描かれている内容を書くので完全にフレッシュに読みたいという方は以下注意してください。

権力も名誉も富も得た人間が最後に目指すものは何か。ハラリが言う、戦争も飢餓も疾病も克服した人間は何を求めるのか。それは「不死」です。

「火の鳥」の血を飲んだ人間は「不死」を得ます。どうなるでしょう。まず最初の数十年で知っている人間や家族は死んでしまいます。その後の世代を率いて長寿の圧倒的な知見で人類を率いるも、次々と心を通わせた人々は死んでしまいます。その寂しさの繰り返しの中で、「不死」を後悔するも、そのうちに肉体は朽ちてしまいます。残るのは意識だけです。
そのもはや彼は神のような視点で、ある生命体が起こり、知性をもち、やがてその知性ゆえ破滅的な戦争を行い滅亡し、その後また別の生命体が起こり果てる姿を目撃します。

もはや彼に時間の概念はないですし。観察するに、不滅の生命体も結局登場しなかったように見受けられます。

あのヒューマニズムにあふれる作家がこんなにも「不死」に対してニヒルな描写であることには衝撃を受ける他ありません。何にせよ「不死」という高度な概念を検討するときに我々は、どうしても哲学の領域に踏み込まずにおれないようです。

エンターテイメントとしてではなく、正面からの未来を予見し考察する書としてSFを見直す論調を最近多々見かけます。ハラリ氏も同様の論調であるようだし、私自身まさにその通りと考えます。
『サピエンス全史』の著者が「21世紀はSFが最重要」と言う理由
ビジネスパーソンにとって、「SFを愛読している」と言うのはためらいがあるかもしれない。現代社会に生きる上で重要なのは金融や会計のような専門知識や、英語のような実用スキル、過去に実際に起こった歴史など。これらに比べてSFが語る虚構の世界は、大の大人が時間を費やすにはふさわしくない、そう考えている人は少なくない。ところが世...

実際に私が子供の頃に読んだSFで描かれていた未來はすでに多く現実のものとなりました。
特にSFが予知していた文明論的側面は、どんな思想書よりも今役に立つ部分があります。
まして近年人類の進化は加速度を増しているようです。
SFまして「不死」なんて絵空事だと笑い飛ばしていられないように思いますが、いかがでしょうか。

記事一覧 衝撃の書「ホモデウスを読む」

第1回 人類の歴史はほとんど「飢饉」「疾病」「戦争」との戦いであった。
第2回 「飢饉」のリアリティ
第3回 拷問のような苦しみ=飢えるということ
第4回 狩猟採集生活から飼育栽培生活へ
第5回 「疾病」:生が例外か。死が例外かそれが問題だ。
第6回 科学は、宝くじ級の長寿を実現し、そして奪う?
第7回 「戦争」のリアリティ
第8回 「恐怖」と隣り合わせの人生
第9回 核のメキシカン・スタンド・オフ
第10回 我々のなかのサル
第11回 有閑が何を生みだすか
第12回 手塚治虫「火の鳥」が描く「不死」
第13回 死という厄介な概念
第14回 ヒトが150歳まで生きる時代が来る?
第15回 「死」は無念のゲームオーバーなのか?
【台風19号 号外版】本当に地球は壊れかけているのだろうか?
第16回 幸福追求の強迫観念に苦しむ皮肉
第17回 幸福になるには骨が折れる
<新着記事>第18回 盛り上がった飲み会の二次会に行かない理由

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