【第9回】衝撃の書「ホモデウスを読む」 – 核のメキシカン・スタンド・オフ

それ以上に重要なことがある。しだいに多くの人が、戦争は断じて考えられないものと見るようになったのだ。政府や企業や個人が近い将来について思いを巡らせるときに、史上初めて、戦争は起こりそうな出来事とは考えないことが多くなった。核兵器のおかげで、超大国の間の戦争は集団自殺という狂気の行為になり、したがって、この地上で屈指の強国はみな、争いを解決するために、他の平和的な方法を見つけることを強いられた。同時に、世界経済は物を基盤とする経済から知識を基盤とする経済へと変容した。以前は、富の主な源泉は、金鉱や麦畑や油田といった有形資産だった。それが今日では、富の主な源泉は知識だ。そして、油田は戦争で奪取できるのに対して、知識はそうはいかない。したがって、知識が最も重要な経済的資源になると、戦争で得るものが減り、戦争は、中東や中央アフリカといった、物を基盤とする経済に相変わらず依存する旧態依然とした地域に、しだいに限られるようになった。
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現代人の我々は生産的な日常に慣れています。考えてみれば殺しあうことほど非生産的な活動も他にありません。お互いにかけがえのない生命を賭して戦ったところで、タイマンの決闘でもどちらかが死ぬ。勝者は生き残り、もしかすれば敗者の持ち物を勝ち取れるかもだけれど、何かを産み出したわけではなく奪うだけのゼロサムゲームです。第二次世界大戦のような総力戦ともなれば、お互いにボロボロになるまで戦い抜かざるをえない。その間は経済活動も戦時体制となり、兵士以外も窮乏生活です。

余談ですが、革命家というのは恐ろしい人種ですよね、やはり。毛沢東の伝記などを読むと、彼は明快に戦争でどれだけ膨大に人が死のうが、破壊活動が行われ街が焦土となろうが、経済活動が停滞しようが、知ったことじゃないと考えていたことがわかる。いや、むしろその方が良いと考えていた。一回すべてがご和算になったほうが良い、そこから新しい価値観に基づく国家をつくるのだと信念をもってしまっている。それが革命というものでしょうし勝てば官軍ですが、そこに至るまでの死屍累々になる方はたまったものではありません。

<写真Wikipediaより>

確かに、戦争という切羽詰まった状況が大きな発明や技術革新の強烈なモチベーションになってきたことは歴史的事実でしょう。戦争後の焦土から、生き残った人々がしがらみのなくなった世界で奮起して、戦前以上の復興躍進を遂げた例も他ならぬ日本を含めて少なくありません。しかしながら、やはり戦争は惜しみなくすべてを奪います。実際に争いに明け暮れて絶滅してしまった種族さえ歴史を振り返れば珍しくないのです。そんな不合理な時代環境に生まれて敵を殺し自分を守ることに明け暮れる人生(サピエンスの歴史上かなり多くの人々が体験したもの)と、現代人としての我々の人生がいかに質的に違うかを考えると恐ろしいほどです。

そう考えると、戦争がなくなったからこそ、生産性があがり(少なくとも先進国では)現代我々が生きている豊かと言ってよい社会が実現しているとも言えるかもしれませんし、歴史上我々が初めてのゼロサムの奪い合い、殺し合いサバイバル人生ではなく、生活を豊かにすること価値ある生産的なことに生涯大半の時間をかけることができるサピエンスなのかもしれません。

ただし恐ろしいのが、この平和が、核の均衡。つまり、誰かが一発撃ったら人類終了の核の銃口をお互い向けあっている状況があってはじめて実現していることです。いわゆる「メキシカンスタンドオフ」というやつですね。

<写真Wikipediaより>

映画でもよく見るシチュエーションですが、お互いが牽制しあってみんなが無事帰れるパターンも半分ぐらいあるように思いますが、物音にビビったチンピラの指先が思わず反応してしまい、お互い発砲しあった結果全員死んだという身も蓋もないパターンも往々あります。核の均衡という皮肉な奇跡で実現している平和は100年にも満たないものです。サピエンス(人類)700万年の歴史でハラリの指摘する通り初めて実現した「平和」な状態。これが、単純に短い時間軸、映画で言えば銃口を向けあって最初の10秒の緊張状態での夢の出来事でないことを心から願います。金正恩が、ある日気まぐれに核弾頭の発射ボタンを押した瞬間が、先ほどの人類滅亡パターンのメキシカンスタンドオフの顛末にならないことを祈らない人はいないでしょう。

それにしても、そんな板子一枚下は地獄と言わざるをえない我々の文明社会。守るためにはどうすれば良いのでしょうか?選挙で自民党に投票しておけばOK?いやいや鳩山由紀夫や山本太郎は、自民党なんてとんでもないと言っているぞ。そもそも日本人がどんなにジタバタしても無駄で、ドナルド・トランプやイランのハーメネイーが人類の運命を決めてしまうのか。その答えを私は持ち合わせていません。ただひとつ確かなことは、答えが出てしまった瞬間以降に、我々ができることは後悔以外の何もないということだけではないでしょうか。

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