【第6回】衝撃の書「ホモデウスを読む」 – 科学は、宝くじ級の長寿を実現し、そして奪う?

ところが、過去数十年間に、感染症の発生数も影響も劇的に減った。とくに、世界の小児死亡率は史上最低を記録しており、成人するまでに亡くなる子供の割合は五パーセントに満たない。先進国では、その割合は一パーセントを切っている(11)。この奇跡は、二〇世紀の医療が空前の成果をあげたおかげであり、私たちは予防接種や抗生物質、衛生状態の向上、以前よりはるかに優れた医療のインフラ(基盤)の恩恵に浴している。

ユヴァル・ノア・ハラリ. ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来 ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 (Kindle の位置No.220-225). 河出書房新社. Kindle 版.

著者のハラリは、かなりのページ数を使っていかに20世紀、人類が「疾病」を克服してきたかを詳細に検証しています。
先回見たように、平均寿命が20~30代を超えることがなかったと言われる700万年のサピエンス(人類)の歴史で80歳以上の平均寿命が実現したのは、ついこの100年のことです。100÷7,000,000=0.00000014。一世代を仮に35年だったとすれば、0.00000005つまり現代に生きる我々一人一人が、サピエンス以降の自らの祖先1世代1世代を分母にしたときに0.000005%の存在なのです。ちなみに直近の年末ジャンボ宝くじ1等当選確率も、0.000005%つまり2000万分の1です。現代の先進国に生きる我々全員が宝くじ的確率で長寿の恩恵にあずかる世代なのだとすると、これは結構世界の見え方が違ってくる話ではないでしょうか。

<Konstantin KolosovによるPixabayからの画像 >

我々は歴史を、どうしても偉人や支配者の視点で見がちです。なぜなら歴史書に残されているのは、どんな国でも王や貴族、支配者階級の物語だからです。徳川家康は75歳の長寿でしたが、当時日本人の平均寿命は37歳~38歳だったと言われています。1598年に豊臣秀吉が伏見城で「露と落ち露と消えにしわが身かな難波のことも夢のまた夢」の辞世を残し死去したのが63歳です。戦乱の世に勝ち残った天下人だからこそ成し得た長寿と言えます。そんな大名でさえ、世継ぎが生まれても成人するとは限らなかったのです。
まして、ほとんどの人口を占める農民にとって、低い農業の生産性は労働集約的な苛酷さと同義だったでしょうし、高い税、年貢を払ったことろで現代の政府のようには社会保障で還元してくれることもなかったわけです。常に健康状態も悪く、衛生状態にかまける余力は大きくなかったに違いありませんし。実際に、小さい子供の頃から重労働に明け暮れ、栄養状態も悪く医者もいなければ、長生きすることは至難の業でしょう。

だから、エイズやエボラ出血熱のような自然災害との戦いでは、形勢は人類に有利な方向に傾きつつある。だが、人間の性質そのものに固有の危険についてはどうだろう? バイオテクノロジーは私たちがバクテリアやウイルスを打ち負かすことを可能にしてくれるが、同時に、人間自体を前例のない脅威に変えてしまう。医師が新しい疾患を素早く突き止めて治療することを可能にしてくれる、まさにその手段が、軍やテロリストがさらに恐ろしい疾病や世界を破滅させる病原体を遺伝子工学で作ることも可能にしかねない。したがって、何らかの冷酷なイデオロギーのために人類が自ら強力な感染症を生み出す場合にのみ、そうした感染症は将来、人類を危険にさらし続けるだろう。自然界の感染症の前に人類がなす術もなく立ち尽くしていた時代は、おそらく過ぎ去った。だが、その頃のほうがましだったと懐かしむ日が訪れるかもしれない。

どこまで考えてもせん無いことかもしれないのですが、人間は自分が絶対に存在していない未來についても心配してしまう生き物です。もっと有り体に言えば自分の子孫は今より健康長寿で幸せな人生を歩むことができるのだろうか?とつい考えてしまいます。もし、それが保証されないものだとすると、毎日必死に生き、次の世代に命をつなぐ我々の人生に何らかの意味はあるのでしょうか?

<Arek SochaによるPixabayからの画像 >

この答は一概には存在しません。現代人に100歳まで生きることさえ実現した医療技術は、楽観的に考えれば、さらに進化し人間の長寿記録更新に力を貸すでしょう。しかし、ハラリが指摘する通り、まさにその技術がサピエンス700万年の歴史に終止符を打つかもしれないという不安感を、ありえないと笑うことはできないように思います。オウム真理教がサリンやVXガスだけでなく、ボツリヌス菌や炭疽菌を使ったテロをまさにこの日本で画策したのは、そんなに遠い昔のことではありません。将来同じ程度に狂ったカルトが、より進化した技術をもてあそぶ日がこないことだけは祈りたいものです。

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